情景が蘇る・情景を遺す、そういう音を。
2024/09/16 08:01 Filed in: スピーカーシステム
みにくい「自前サーバーブログ」が続いていますが、もうしばらくご辛抱ください。facebookに寄せられた視聴環境ごとの見え方について、対策を検証しています。
この方のNAロードスターに音楽のある空間を加えさせていただいたのは、ちょうど1年ほど前になります。NAロードスタースピーカーシステムtype2、3Dシステム、BassPLUS+をDSPパワーアンプでセットアップするフルシステムです。
詳しいことは、過去に書いたブログに詳しく書きましたので、そちらをご覧になってください。
『音楽は、心に響くもの。』
一昨日、IYAGarage へ試聴に来てくださった方にも訊ねられたのですが、わたしがスピーカーシステムを通じて創りたいのは、大好きになってもらえる音楽空間で、スピーカーシステムそのものの開発も、音響機材の選定もそれらのセッティングデータの書きあげも、そのために必要な要素を抜かりなく積み上げることに努めているだけだったりします。オーディオ趣味に精通されている方ならよくご存じだと思う「リファレンス」とか「原音再生」とか「高級=高額=良音質」というような事ごとを目指したり推奨するようなことは、考えたこともありません。数字で表せる高性能なものをつくりたいわけではまったくなく、ただただ惚れてもらえるものの正体を追い求めているわけです。
惚れてしまう、すなわち琴線を響かせる要素のひとつに、在りし日の情景を想起させるような感動体験があると思います。
今回、この方が愛車のNAロードスターにご夫婦で収まり、スピーカーシステムの仕上がりを確認していただいたときの様子は、まさにご自身が刻み遺した轍の姿を確認できたことへの感動だったのだと理解しています。かつてDJとしてパフォーマンスを披露していた頃に好んで選曲した楽曲では、客にしっかりと伝えたいキメのフレーズのきらめきを確認し、坂本龍一のピアノが奏でる旋律に彼にしかわからない記憶が甦り、そして奥さまの愛聴曲への興味がふくらみ……そういう様子が収められています。
そのような様子を目の当たりにして、ご当人以上にわたしが感激してうれしくなってしまったのは、オーナー氏は数年前に片耳の聴覚をほぼ完全に失い、大好きだった音楽をむしろ遠ざけるような日々を過ごしていたことを伺っていたからでした。
彼の片耳は音を感知するセンサーとしての機能を失ってしまいましたが、彼の脳に刻まれた音楽の記憶は、それ以外のすべてのセンサーを通じて彼に入力された情報によって大好きなロードスターの車内にくっきりと蘇っているのだと、そのように映りました。思わず両手を拡げて左右の空間の中に浮かぶ音楽をイメージするような姿に、事情を伺っていたわたしには信じられないような光景を見ているような気持ちになりました。
鼻先をキンモクセイの香が撫でるとふと思い出すような何か……のような体験、誰しもにあると思います。それと同じように、記憶の彼方に置いてきたような情景が蘇るような音楽空間を創って、それを必要としている人に届けてみたい。そして欲を言えば、愛車の中で過ごした今日の記憶を何年も先にふと思い出したときに、その情景の一つの色としてわたしが創ったスピーカーシステムから流れる音楽が蘇るようなことがあれば最高じゃないかと、そう思うわけです。
現在、ウェブサイトを全面改修しているため、スピーカーシステムへのリンクが切れています。スピーカーシステムの製作、試聴については、I.Y.A.Garage 岩間くんへご連絡ください。追って、ヤマグチが対応させていただきます。
090-7630-1461
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