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大好きなクルマと大好きな音楽と。

2024

W124を離れる人が増えてきたそうです






とても大切なことですが、ずっと長いこと……たぶん大昔に雑誌やムック本でメンテナンスガイドみたいな記事を量産していた頃以来……書いていなかったので、ちょっと恥ずかしいというか、いまさらわたしが書かなくても大勢のユーチューバーが「悲惨!○○」みたいな煽り動画を山ほどアップしているから、それが正解で常識ということでもういいんじゃないのという面倒くささというか。簡単に言うとですね、今さらオマエの出る幕じゃねえし的な後ろめたさを感じつつですが、とても大切なことなので少しだけ書きます、お目汚しごめんなさい。


最近、W124を降りる人が増えているという話題、あちこちから入ってきてます。仕方ないと思います。クルマの目指す方向や完成度はそこそこ違いますが、言ってみればトヨタ・クラウンと同じジャンルのクルマですから、1990年製のクラウンに乗っている人がメリメリ減ってきてるという話を聞いても、不思議に思わないどころか、まだ乗ってる人がいたのかよ、ってな感じだと思います。

メルセデスのEクラスの数々の素晴らしい特徴は、実用車としての評価の範疇にほぼすべてが存在します。実用車としてその時代その時代のベンチマークとなるほど素晴らしいクルマなのだ、というところが、まず肝心です。それはすなわち、いつでも普通に動いて必要なときに行きたい場所に自分や家族や荷物を運んでくれるよね、という性能がまず担保されていることが存在する意味の前提ということなんです。その上で……、走り味とかデザインとか、最後のメルセデスらしいメルセデスだとかいうことを言いたいのであればそれはそれでいいのですが、そういう所有する歓び的なことは、担保されるべき性能が愛車に揃っていることを確認した上で初めて語り合いましょうという順番だと思います。

そのためには機関を維持する整備が欠かせないのですが、もはやそれがままならなくなってきました。理由は、補修部品です。メルセデス・ベンツもボッシュも、クラシックモデルの部品供給を維持します!とアナウンスしてくれていますが、アナウンスのその先のアクションはいったいいつなんだという状況です。ここに書いたような、W124がメルセデスのEクラスとしての価値を維持するのに必要な最低限の部品も、あれもこれもそれもどれも生産終了されていて新品部品として買うことができません。仕方がないので中古部品を探すと、そこにはみんなが取り合いをしていてとんでもなく高騰した価格でやり取りされている市場があって、多くの常識ある人は新品で1万円だった部品をノークレームノーリターンの中古5万円みたいな条件で買うことを躊躇するわけで、探し求めている部品との素敵な出会いがいつか訪れるのを待つかW124を諦めるかの二択みたいなことになるのも仕方がないよなあと思うわけです。

心折れます、よね。

これはW124に限った話ではありませんが、旧いクルマを愛車として大切にしようと思うとき、そこに性能の話を持ち込んではいけません。動力、コーナリング、ブレーキング、乗り心地、安全性、静粛性、燃費……すべての性能の話です。例えばW124は、1970年代に設計されたクルマです。すべての部品の設計図は、ざっくり50年前に描かれたものです。そんなに旧い設計のクルマが日本で普通に走れるのは、日本の交通規則が同じくらい昔からほとんど変わっていないからだったりします。速いクルマや安全性の高いクルマや静かで乗り心地のよいクルマや熱効率のよい動力源を備えたクルマ、という話題で語ると、存在価値がどこにあるのかわからない、そういうクルマだということになってしまいます。夢中になっているうちは絶対的な性能評価なんてどうでもいいことだったりするんですが、前述したような「維持するだけでも大汗かきの一苦労」みたいな現実が身に降りかかった瞬間、あれ……って冷静になってしまうような気がします。だから、旧いクルマに性能の話を持ち込んではいけないんです。

長くなりすぎるのでここには書きませんが、「質実剛健」や「最善か無か」という標語も旧いメルセデス愛好者にとって心地のよい内容に解釈されて信仰の証のようなことになってしまっている感があります。質実剛健というのは豪華絢爛、贅沢三昧という意味ではないんです。むしろ無駄な金は使わない質素な振る舞いという言い方の方が近いと思います。最善か無かも似たような印象を受ける言葉です。このあたりの大勘違いが常識になってしまったのは、あの頃系メルセデスのことをせっせと盛り上げた雑誌にも大きな責任があると思います。構成、書き手をたくさん務めていた張本人として面目ないと感じます。雑誌をたくさん売っていっぱい広告を獲得したいのだ、という極めてストレートな出版社の要求に応えるのが商業メディアの制作に携わる者の務めだということを盾に今さら許しを請いたい気持ちになりますが、個人的にはできる限りめいっぱいの誠意ある記事づくりを実践していたことも知っていただければ少しはエンマ様への申し開きになるかしら、という思いでもあります。「質実剛健」「最善か無か」というキーワードを赤文字で表紙に書くとおもしろいように本が売れるのは、自動車雑誌を制作している側の人なら誰でも知っていたことだったわけです。

脱線しました、軌道に戻しましょう。


それではW124のような、わたしが大好きなきっとこれを読んでいる皆さんも大好きな、あの頃系メルセデス、あの頃系ドイツ車にいったいどんな価値があるというのか、ということになります。

「創り手の知性の高さを感じる作品を人生の身近に置く」こと。

人それぞれの考えがあると思いますが、わたしの場合は完全にコレに尽きます。

書き始めれば、ねじ1本にも「へぇ!」「なるほど!」「これ考えた人きっと天才」みたいな話がいくらでも見つかります。わたしには、感覚的にも経済的にもそういう作品を身近に置けるレベル以上の自分であり続けたい、という想いがずっと長くあります。恐らく、10代の頃からそうだと思います。その延長で見つけたのが、W126でありW124でありW201であり、ポルシェ944であり空冷911であったということなんだと思います。

人間が何かを作ろうと考えたとき、人間に許されている所作は「カタチの工夫」と「材料の選定」の2つ限り、他にはありません。Eクラスは、メルセデスにとってもっともお金を稼いでくれなくてはいけないモデルですから、しっかりとした利益率を確保した設計であることが絶対の絶対に求められた設計になっています。そして1980~90年代を見据えたEクラスの設計事情がどうだったのかということを推察するに、当時190クラスがなかった小型車枠に3シリーズをぶち込んで大当たりをしたBMWが1つ上の、つまり儲け代がさらに大きな5シリーズに攻勢を掛けてくるのは目に見えていたはずで、ぐうの音も出ないほどしっかりを頭を押さえ込む性能を備えたクルマを価格的な競争力と同時に実現しろという大号令が掛かっていた、はずなんです。

しっかりと利益を出せ……つまり、素材自体や加工にお金が掛かる材料は使えない。
でも同時に、ぐうの音も出ない性能を示せ……ならば、カタチを工夫して安く高性能を求めよう。これって頭がよくないとできないよね。

そして完成したのが、W124というEクラスで、260万台=毎日700台近い台数が10年間休みなく売れ続けた、みたいなとんでもないヒット作だったわけです。

大きな構造や機能はもちろん、小さな部品一つひとつを手にするだけでそこから伝わってくる正解への執念を感じることができます。どれかが尖った性能を有しているわけではなく、けれどもそれらが自分の役割をしっかりと果たし、さらに連なる部品たちとの協調を見据えて正しく積み上げられている様子が見えるW124に、紛うことない「創り手の知性の高さを感じる作品」を、わたしは感じるわけです。


ちょうど昨日、スタッドレスタイヤに交換するために外したホイールを洗ってしまうときに撮った写真を使って、長くなりすぎないように2つ3つだけ紹介しましょう。

IMG_9378

W124の後期モデルが普通に履いていたなんてことのない鋳造の8穴アルミホイール、裏側の写真です。
だだっと書きます。

ホイールハブキャリアに接する面はホイールにとってもっとも肝心な部分の一つです。この部分を全面平らの接合面とせずに外周と内周の2周のリング状の凸部でハブキャリアと接するようにデザインされています。様々な整備環境で使用されることを想定した場合、接合面への異物の噛み込みによる不均等合わせが発生する可能性を減らしつつ、接合面の位置決め精度がもっとも確保できるデザインです。ホイールボルトで締め付けたときの接合の面圧があがるので、ハブキャリアに多少サビが浮いてしまってもその凹凸の影響をキャンセルできる可能性を期待できます。
ハブベアリングキャップがはまるハブキャリアの中心の輪っかに嵌合する丸穴は、数カ所のツメが嵌合する構造になっていて、輪っか全周にはまる丸穴ではないデザインになっています。偏心のない位置決め性とホイールのサビや熱による噛み込みが発生しにくい構造です。道具が揃った整備工場ばかりでなく、オーナーが路肩でタイヤ交換する可能性もあるのだよ、ということかと。
5本のホイールボルト分の丸穴を挟んで、5箇所の分銅型の穴があります。裏側からの大きなざくり穴は軽量化のためだと思われますが、それぞれホイール表側に丸い貫通穴が開いています。設計した人に訊いたわけではないので推測ですが、放熱用と考えるのが素直かなと思います。ホイールハブキャリアには、ベアリング、ブレーキディスク、駆動輪はドライブシャフトの作動に生じる熱が入ってきます。200km/hで1時間みたいな走り方ができる土地で生まれたクルマですから、このような構造については独特の知見があるのかもしれません。分銅穴の外側には水抜き用の切り欠きがありますが、その辺りはまあ当然っちゃ当然です。
表側はディスク形状のこのホイールですが、実は8本スポーク形状を基本として、その間を面でつないだ構造になっていることがわかります。中心から厚みのあるスポーク形状が伸びてますが、8つの穴が開いている辺りで皮一枚みたいな薄さになります。ブレーキキャリパーに干渉しないように追い込まれた形状だと思いますが、8つ穴の周囲にしっかりとしたリブを立てて応力にいちばん効果的な両端を支え、薄い面部分にも小さなリブが5本鋳込まれています。横方向ではなくて縦方向なんですね、ということからこのスポークに掛かる力の向きを想像して楽しんでください……ん、楽しくない? そうそう、もちろん8つの穴は全周大きめのRがあるデザインで、応力集中による破損とか誰にモノ言うてるねん(by MB)形状です。この写真では外周に近いところの両端が角張っているように見えますが、ここはリム筒に入り込んでいるところなので3次元的にはRの連続デザインになっています。表面の写真も貼っておきます。二等辺三角形の底辺と言えばわかるかしら、リム側の長い辺も含めたすべての辺がすり鉢状に彫られた8つの穴を眺めながら、ああこれは回ると風を吸い出す形状になっているのだなと気づくわけです。右側に装着しても左側に装着しても同じ効果が期待できる対称形であって、特にブレーキキャリパーはホイールの表面すれすれのところまできているので、キャリパーの熱を外側に掻き出す効果も少なからず期待できるんじゃないかなと思うわけです。

IMG_9375

もう1枚写真を貼りましょう。8つの穴の形状が完全なる大きなRの連続だということも、こっちの写真の方がわかりますが、この写真でお話ししたいのはバルブゴムを外側からしっかり抱き込むように保護するデザインのことだったりします。195/65-15サイズのこのタイヤは、時速200kmで走っているときに毎分1,666回転、毎秒27回転します。このときバルブゴムが受ける遠心力は想像ができなかったら、いちど30cmくらいの紐の先にバルブゴム(と同じくらいの重量のなにか)を縛って毎秒27回転で回してみてください……人力ではできないと思うけど。バルブゴムってゴムなので、うにょって外周向きに曲がるわけです。で、停車するとまっすぐの位置に戻って、また走ると曲がる。これを繰り返していると、あるとき突然サクッとバルブゴムの土台のところのくびれが折れることがあるんですね。じんわりでなく、突然ゼロになるので、死んで(誰かを殺して)しまうような大きな事故になる可能性が大いにあります。なので、バルブゴムの外周側を支えるデザインになっている、と。同じ時期のポルシェ911はアルミの支柱を両面テープで貼ってましたが、より幅広い顧客層を持つベンツは不用意なことが起こり得ないようにデザインの中に盛り込んだということです。バルブゴム根元のホイールとの取り付け部、つまり折れるとしたらココというポイントからいちばん遠いバルブゴムの先端に取り付けられるバルブキャップは、ポイントへの応力効果も最大なわけで、なによりも軽いことが大切です。あの頃系メルセデスのバルブキャップは、薄い金属をプレス成形したもので綿毛かと思うほど軽量です。そしてよくある黒い樹脂製のものと違い、跳ね石で割れることなく常に屋外にあっても耐候性に不安なく、内部に樹脂製のシールリングまで付いているので、バルブゴムの虫ゴムに異常があっても突然の空気抜けを回避できて、というものです。

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そういえばこのホイール、脱いでも凄いんですということで、タイヤが付いていないものの写真を撮ってきました。リムの筒部分が大きくえぐれた形状になっていることがわけります。大昔にタイヤ屋さんでアルバイトをしていた頃、タイヤの脱着がしにくくてイヤだなあと感じたことを思い出します。タイヤのビード部がこの凹みに落ちてしまって、骨董品みたいなそのお店のタイヤチェンジャーだと引っ張り出そうとするとリムに傷を付けそうになって。当時の国産車のホイールはほとんどずんどう形状でしたし、アフターマーケット品だと今でもずんどう形状が多いと思います。自動車もの書きの仕事を始めていろいろ勉強している中で知ることになったのですが、この凹み、少しでもたくさんの空気を充填できるようにするための性能要件デザインなんです。極端な角度の折り曲げデザインにしなければ、同時に強度も高められると思います。タイヤは、ゴム質や骨組みなどの構造が語られることが多い部品ですが、何よりもまず空気が仕事をしているのだ、というところを知らずに理解することができません。タイヤの中にはできるだけたくさんの空気に留まっていただいてお仕事に励んでほしいところですが、タイヤの外径と内径の差xトレッド幅分しか空間がありません。空気圧を上げすぎると跳ねてしまってクルマが路面から離れてしまいます。そこで、ブレーキやサスペンション機構に干渉しない範囲で、ホイールを内側に拡げて空気のための部屋を拡げるという手を取るわけです。たかがタイヤのエアごときと言ってはいけません。ここ、本当に本気なポイントですから。ポルシェとか、もっとエグい設計してます。ちょうどガレージに928S4というモデルがあるので写真を撮って紹介しましょう。

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ホイールの穴から内側を覗くと、なんと穴のデザインの内側に飛び出すほどの出っ張り、つまり空気のための部屋が拡大されていることがわかります。このクルマの場合ブレーキキャリパーがいちばん外側に飛び出しているのですが、キャリパーの外側とホイールの内側との差は1センチないくらいです。バランスウエイトとの隙間は、5ミリ程度しかないように見えます。奥の方に見えているベージュ色の樹脂部品が取り付けられている高さが、このホイールの本来あるべき内径位置です。こんどホイールを外して検証してみたいと思いますが、1センチ以上の凸凹が鋳込まれているんです。空気にたくさん留まってもらうための空間づくりのためです。ここまで極端ではないにしても、メルセデスもW124の何の変哲もないアルミホールにも同じ設計思想を盛り込んでいるというわけです。それにしてもこの928S4のホイール、どうやってこんな変なカタチを鋳込んだんでしょうね。外側はともかく、内側の鋳型が抜けない……ようにしか見えません。こんど外してゆっくり検証するのが楽しみです。


もう読み疲れましたよね。放っておけばこの下に何メートルも文字がぶら下がるくらい書き続けてしまうのでこのくらいで締めますが、つまりこういうことだと最後に書きます。

30年以上、世界中のいろいろなクルマの間近に居られる仕事をしてきましたが、この頃の20年間くらいのドイツ車がエンジニアリングに興味のある愛車家たちに与えてくれるトキメキは、本当に格別のものだと断言できます。クルマというのは、実はもう十分に成熟した工業製品なので、まあ言い方はアレですが、そこそこな感じで作っても大きな問題を起こさない程度の製品ができてしまうんです。製品へのエンジニアリングのこだわりと、商品性つまり売れる売れないという意味での優劣はほとんど関係ない時代に到達して久しいです。そんな、言ってみれば技術的ロマン飽食自動車時代にあって、溢れるエンジニア魂をそこここに見つけることができる作品を自分の人生の身近に置くという歓びは、それを手放してはいけないという強い執着を沸々とさせたとしても何の不思議もないことだと思うんです。


あの頃系メルセデス、あの頃系ドイツ車の魅力について、わたしが思う価値観の話を書きました。こういう価値観とEクラスの実用性を例えばW124という旧いモデルで両立させるためには、いろいろなハードルを越え続けることとセットになってきていて、次第にハードルの数が増えてときどき高いハードルが出現する状況深まることも容易に想像できるんです。でも、頑張れば超えられないほどのものでもないだろうなとも思います。なにしろ信じられないほどの台数が作られたクルマです。愛好家も少なくありません。これまでの30年くらいのようにはいかないけど、この先いったい何年くらいクルマの運転ができるんだろうかと思えば、あとちょっとじゃんという世代の人も多いんじゃないでしょうか。

その手を離さないで……と、そう言われているみたいな気持ちになっちゃうんですよね、わたしは。離してしまったらきっと再会できないでしょうから。

皆さんはどうですか。




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W126スピーカーシステム Seri.3 製品版1号機、まもなく






あの頃系メルセデスW126 スピーカーシステム・シリーズ3、年の瀬になってようやく製品版の部品が1セット分完成しました。

フロント用、リア用、純正フロントシート用
BassPLUS+キット、です。今回もけっこう複雑なリクエストで加工をお願いしたのですが、図面、あるいは手削りの型を忠実に再現してくださった職人さんにはほんうに感謝です。CFRPFRPそれぞれの専門家の知見を踏まえたアドバイスを交えながら、1つひとつのカタチが仕上がってゆくわけです。

クリスマスの週は、都内での取材にはじまって、大阪、兵庫、名古屋とほぼ旅の人状態だったので、晦日の本日もわたしが行うべき製作作業を進めています。1月中には、長期お預かりの後、一時退院いただいているW126に再度ご来場いただき、リアスピーカーも交えたDSPフルシステムを完成させます。


2024_1230_W126_parts

写真は、わたしのガレージで行う最終加工の途中の状態なので、きちんと完成したら改めて写真を撮りますね。

思えば、わたしのW126のフロントスピーカーで試作を始めた2011年2月。手加工のウェットカーボンのバッフルボードにフォステクス製FE83Enをポン付けしたおもちゃみたいなものをダッシュボードで鳴らして、でもそのときすでに職人さんに無理を言ってカタチにしてもらったFRP製W126専用エンクロージャーは組み合わせていたのですが、きっとこういう感じのハズ!という期待に反したスカスカでキンキンしている鳴り音に愕然としたところから、ヤマグチスピーカーシステムは始まっています。

音の回り込みを遮断する、聴き疲れの原因を排除する、車外への音漏れを圧倒的に減らす、繊細なホームオーディオ用スピーカーユニットを過剰動作によるノイズを回避しながら鳴らし切る……1つ解決すると、また次の課題が見えてきて、ほんとうにやるべきことがこんなにあるのかという感じだったことを思い出します。

板を買ってきてスピーカーのっけて鳴らすだけでは絶対に超えられない……つまりヘビーデューティ仕様な車載用ではないユニットを使いながら、ノイズが出てこない小さい音で我慢して……というところから離れて、車内でしか味わえない音楽を浴びる感激まで到達することに、自分がやる意味があるというか、家と同じだったら家で聴けばいいわけで、クルマの中でしか楽しめない新しいエンターテイメントにまで昇華させた「何か」を作るんだ、という目標の達成は、そんなに簡単なはずないじゃないか的だったわけで。当たり前ですよね、新車発売から40年間もあったわけで、そんなに簡単なら39年くらい前に誰かが完成させて提案しているわけで。

ま、よけいな話が長くなりましたが、今年の夏頃からサウンド検証用の試作までだったW126用スピーカーシステムのすべてのアイテム(フロント/リア/BassPLUS+)の、製品版の1号機が完成間近になったことで、ようやく安心してオーダーを受け付けられるようになりましたというお知らせです。

お問い合わせ、お申し込みは、以下のリンクからお願いします。
すでにお問い合わせをいただいている方には、ようやく整った正確な情報をもとに順次連絡をいたします。

【W126スピーカーシステム】

ちなみにサウンド検証用で鳴らしたサウンドは、ですね……車内の空間がゆったり広々してるW126の特徴をドキドキするほどの音楽空間に上手に活かすことができていると確信しています。

W126オーナーだけの特権、もちろんあるべきでしょう。それ、わたしが用意します。




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深夜のスピーカーシステム






なんだか疲れてしまって11時頃に布団に入ったら、やっぱり午前3時頃に目が覚めてしまって。もう一度頑張って寝てもよかったのですが、まあ身の回りじゅう、“遅れていること”だらけなわけで、今晩ひと駒進めると少し気分が楽になるかもしれないなと思って、ガレージに降りました。

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NAスピーカーシステム type2の片側から音が出なくなってしまったので診てほしい、という方のスピーカーシステム。スピーカーユニットのコイルがとんでいました。ロードスター、特に走行音が大きいNAでは、思っている以上に音楽を再生するボリュームがあがってしまう傾向があります。音が大きくなっても何を演ってるのかわからなくなる……という状況が、ほとんどの人がNAロードスターで音楽を楽しむことを諦めてしまった理由なのですが、そこをなんとかしようというところが開発の目的だったわけで、type1の完成時にかなりのところまで到達できたと自分的には思っています。

ところが、幌を開けて走っているNAロードスターで音楽が聞こえてくる、音質的にもかなりイケてるじゃないか、こんなの今まで経験したことない! ということになると、こんどは“もっともっと”、という気分になるわけで、ボリュームをどんどんあげていくわけで、実はそれでも音が割れたりということが起こらないようにいろいろ考えて作ったこともあって、まだいけるまだ大丈夫とボリュームダイヤルを右に回して、ということが無意識に行われるようになって……。

それはそれで、すごくうれしいことなのですが、今回のように壊れてしまうこともあります。4年半ほど頑張ってくれて、わたしのところへ一時里帰りでございます。


NAtype2に使っていたデンマーク製のスピーカーユニットが怖ろしく高額になってしまったことと、さらに高効率で、つまりボリュームダイヤルを少し控えめな位置にしていても同じ感覚で聴ける音量感が得られ、構造的にも大きな入力にへの耐性が高いと判断できるスピーカーユニットを使用しているという理由で、type3へのバージョンアップを兼ねた修理をお勧めしました。


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type3にバージョンアップする際に、エンクロージャー以外すべての部品を交換します。配線や端子、ねじ類は、エンクロージャーに使われているものも含めて、すべて新品に交換します。またエンクロージャーのコンディションで気になるところがあればその改修も行いますし、当然、全体にわたってできる限りのクリーニングを実施します。


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深夜のガレージで、手のひらの上でスピーカーシステムの改修作業をしていると、前回自分の手のひらの上で完成してから、今日また再び自分の手のひらの上に戻ってくるまでの間に、どんなところを走って、どんな音楽を奏でて、オーナーとどういう思い出を共有してきたんだろうとか、そういうことをふと思います。

どんな仕事をしている人もきっと、自分の汗の成果がどこかで誰かの役に立っている幸せのきっかけになっている、かもしれないと思うことって、あるんじゃないでしょうか。わたしはスピーカーシステムにしても原稿にしても、とてもわかりやすいカタチで成果物を世の中に投じることが適う仕事に就くことができています。そのことの幸せを感じること、いつもいつもあります。だから深夜の作業も自分の中で消化できるんじゃないかなと考えています。

体を気づかってくれる人がたくさんいることもとても幸せに感じていますが、働きながら……例えばキーボードの上に突っ伏してMacの画面が「っっっっっっっっっっっっ……」みたいな文字で埋め尽くされるような、ガレージの作業台で接着剤が指先をベタベタにした汚い格好のままとか、そういう死に方、大いにけっこうというか、最高に近いくらい幸せかもしれないと考えています。見つけた人には申し訳ないけど。。。まあ、温かい布団の上の方がやっぱりいいかもだけど。

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というわけで、そんな悲愴な話をしたかったわけでなく、作業が終わったら朝6時過ぎで、これを書いている間に7時18分になって、今日も始まったねというお話でした。


そうそう、いまIwamaYukiAudioGarage で預かっているNAロードスター、普通のカーナビにiPhoneつないで、DSP機能のない普通の4chパワーアンプとサブウーファーという現在の組み合わせから、DSP制御の3Dシステムにバージョンアップしたいというリクエストを頂いているクルマですが、現時点の記録という感じのスマホ撮影の動画がIYAGarageからアップされていました。NAロードスタースピーカーシステムtype3の、ほとんど素うどん状態での再生音はこんな感じです。素うどんでもとても美味しい、というのがyamaguchiスピーカーシステムすべてのモデルに共通した特徴です。素が美味くないと、その先が成り立たないんです音響システムでも、ほんと。

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【動画のリンクは、こちら】


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Bow。さん、逝く。






Bow。さんが旅立たれた。

親しいと言えるような個人的な付き合いがあったわけではありませんが、「クルマの達人」に登場していただくために取材したときの心地よさをよく覚えています。数年前に、癌を患ったそうだと人づてに知って、少し落ち着いた頃だとも聞いたので携帯電話を鳴らしてみたけど応答はありませんでした。喉の腫瘍だったと後で知りました。

Bow。さんのことを書いた「クルマの達人」を掲載します。2007年のちょうど今ごろの季節に書店に並んだものです。写真は橋本玲さん。誌面に掲載したものとは違う、未公開のカットです。誌面ではもう少し厳しい表情をしたものを使いました。あの頃は誌面に緊張感を持たせるためにそれがいいと思ってのことでしたが、こちら表情の方が、わたしの知っているBow。さんらしいと思います。アトリエのガレージにあった、「TR-3」の写真も添えておきます。この写真が撮られた17年前の時点ですでに40年の連れ合い。誰もが知っている、あのTR-3です。

Bow。さん、やすらかに。

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魂って、本当に存在するんでしょうか。もし存在するとしたら、それはいったい身体のどこにあるんでしょう。やっぱり頭の中、それとも胸の奥かしら。

Bow。さんの仕事場にあるガレージで、コーヒーをすすりながらの楽しい話も終わり、住宅街の細い道をてくてくと散歩のようにのんびり歩きながら、そんなことを考えていた。甲州街道に出る頃には、もう違うことが気になっていたんですけどね。だってこの大通り、今日もすごいクルマの流れ。意識は自然に、走るクルマへと向かいますから。

「実は20代の頃は、ファッション関係の仕事に精を出してたんだ。自動車の絵を描く仕事も十分あったけど、それよりももっと派手なシーンで生活していたような気がするな。だから当時は自動車の絵が仕事の中心っていう感覚は、なかったの。ファッション関係の仕事が面白くて、そっちに夢中だったんだね。

でもね、自動車の絵は頼まれなくてもずっと描いてた。3歳のころからだから、自動車の絵は。

おばあちゃんがね、甲州街道まで散歩によく連れてってくれたわけ。進駐軍の兵隊が乗るアメリカ製の最新型がカッコよくてね。あたりが暗くなって、“和弘、もういいでしょう?”って急かされても、あと少しあと少しって眺めては、家に帰って新聞の折り込み広告の裏に描いてたんだよ。好きだったんだね、自動車が」


Bow。さんの描くクルマの絵は、エッチだと思う。誰が乗ってきて、誰を待ってるのだろう。5分後の絵の景色には、もうそのクルマはいないかもしれない。誰とどこへ向かってしまったのかしら。切り取られた情景の中に時間の流れが見えてきて、妄想が膨らんでしまう。言葉知らずで失礼極まりないが、とてもエッチだと思うのだ。

「そう、僕の頭の中は、とてもエロティックだと思う。注文主からお題を与えられて、それは大抵“こういう色のこういうクルマで”というものなんだけど、少なくとも2日間くらいは、イメージを膨らませてるだけだよね。若い頃に絵を習ったことがあるんだけど、その頃からそうだった。ただ自動車をデッサンするような絵じゃなくて、観てくれる人たちが物語を感じてくれるような絵にしたいんだ。

こういうことなんですよなんていう答えがあるわけじゃなくて、十人十色、それぞれの記憶の中で共鳴する空気を感じてくれればいいと思う。僕の知らないところで、僕には想像もつかない物語が添えられてるのかななんて考えたら、本当にうれしい」

魂って、身体の中にあるんじゃなくて、思いを込めた何かがその人の手を離れた瞬間に、そこに宿るものなのかもしれない。言葉が口を離れて言霊になるように、絵は思いを描きあげた瞬間に魂を宿すのだとしたら、これは最高にエロティックだと思う。どこで誰の感性を濡らすかも分からない。わたしは、Bow。さんの絵、とてもエッチだと思う。



自動車が描きたい
その気持ちは譲れなかった


今も子どもの頃と変わらず、ドキッとした瞬間のクルマのいる風景を頭の中で紡ぎながら、作品を描いているのだというBow。さん。30代に大きな気持ちの転機を迎えたと教えてくれた。

「自分が何をやりたいのかっていうことに、相当悩んだ時期があってね。もちろん生活もあるから、好き勝手やっていいわけじゃないし、でも何か本当に集中したいことに正直に向かい合えていないような自分が嫌になっていたんだと思う。悩んだよ。

でもね、突然ひらめいたの。僕、自動車の絵が描きたいんだって。それがお金になるかならないかは、みなさんが決めてくださることで、仕事にならないから描かないというのは違うだろうって。自動車の絵を描くということを生き方の中心に据えて、ごはんを食べるためにやることなんて、別にどんな仕事でもいい。それでいいやって思えてからは、本当に気持ちが楽になったんだよ。なんだか毎日幸せだなぁって、感じられるんだ」

それでも幸いに、大した浮き沈みもなく今日まで来られたのは、運もよかったのかもねと笑うBow。さん。今や、クルマ好きが集まる場所ならどこででも見かけるあの絵に、そういう逸話があったことに驚いていると、こんなことを話してくれた。

「誰にでもあると思う、僕にとっての自動車の絵のような大切な存在って。それが見つからないって嘆く人が多いみたいだけど、見つけるものなんだと思う。見つける気持ちをあきらめないで、ずっとずっと自分を信じて探し続けなきゃ。

コレだってひらめくのが、20歳だって40歳だって70歳だっていいじゃない。見つけたその目標を頭の上に掲げて、今日は昨日よりも1ミリ近づいたな、あっ今日は昨日より1メートル下がっちゃったから明日は2メートル進もうって。そういうのが楽しいんだよ。それを絶対に仕事にしようなんて構えて疲れちゃうんじゃなくて、毎日地味に働いてるけど、自分にはアレがあるぜ、って思えることが最高に愉快なんだって」

ちょっと格好いいこと言い過ぎてるみたいで恥ずかしいね、と笑いながら、一目惚れして40年連れ添ってきたトライアンフTR3の話をはじめたBow。さん。マロニエの落ち葉道に静かに止まるクルマの絵に感じたあの空気、こういう男のみつごの魂が込められた作品なのだと知った。
 


「どうしても描き続けたい
 自動車の絵を描く動機はそれだけだよ。。。」

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「NS号」日本自動車殿堂に登録されました。






島津楢蔵が1909年(明治42年)9月に製作した「NS号」が、日本初のオートバイを理由として日本自動車殿堂の歴史遺産車に登録されました。その伝達式が、昨日、千代田区神田の学士会館で行われ、島津楢蔵の親族ということで同事務局から名代を仰せつかり参列してきました。


2024_自動車殿堂01

2024日本自動車殿堂_NS号

壇上で読んだ挨拶文です。


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最近、NHKの「坂の上の雲」の再放送を観ています。主人公の軍人 秋山兄弟、俳人 正岡子規、作家の夏目漱石、森鴎外までも、変革の礎となった偉人たちが同時期に同窓とも言える近さで感化しあう偶然が、互いの士気を鼓舞し、大きな成果につながる活動の原動力となっている様に改めて驚いています。

歴史を振り返ると、音楽、文学、政治などのあらゆる分野において同様の事例を見つけることができるのですが、本邦モータリゼーションの起源においてもまた同様であります。

今回、選考委員の皆さまのご解釈により、日本自動車殿堂へ登録されることになった明治42年作の「NS号」にも、それを製作した島津楢蔵の決意を促す人たちの姿があったことに、製作者の末裔として謝意を表さずにはいられません。

持ち時間の都合でここで詳しくは申し上げませんが、東洋工業(現・マツダ)を創設された松田重次郎氏、豊田式織機を興し後にトヨタ自動車へとつながる流れの礎を築かれた豊田佐吉氏という錚錚たる偉人が、人生の先人として若き楢蔵と関わりのあるところに居られたことは、楢蔵のガソリンエンジン、そして「NS号」の創作意欲に強い追い風を吹かせたことを容易に想像させます。

そしてその後、楢蔵とその実弟である銀三郎が揃って航空機用エンジンの先駆者として各地の展覧飛行会に赴いていた頃、浮かび上がる機影を見上げる少年時代の本田宗一郎氏の姿がありました。

本邦初のオートバイとして「NS号」がこのような栄誉に与ることを受け、かつて本邦には間違いなく新しい世代の活躍に追い風を吹かせる先人の存在があったこと、そのような風を受けた者たちが一心不乱に未到の成果を求めて励むことを良しとし、後世へと継承されてゆく風潮があったことに思いを馳せ、わずかでもその気配復興の助力となる活動ができれば、末裔として先祖に成り代わり日本自動車殿堂入りの恩義に報いるのではないかと思うところです。

本日は、「NS号」の日本自動車殿堂入りを賜り、誠にありがとうございました。


令和6年 11月13日 モータージャーナリスト 山口宗久

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日清、日露戦争を経た明治期の世情、もちろん想像するしかない120年ほども昔のことですが、十代後半から二十歳頃の前のめりな青年を抑え込んでしまうことなく、背中を押すような態度で接した大人たちが生み出した楢蔵による「NS号」誕生でもあったと確信しています。

楢蔵にひとかどの才能があったことは疑う余地のないことですが、同時に、思い込みと理想だけで突っ走る若気の青さが人一倍強かったことと、その様子を楽しむか如く鼓舞する……ある意味無責任な楽しい大人たちの存在があったこと。そして、当時も間違いなくあったはずの、この世を支配するかのような巨大な組織の都合に左右されない個の強さを、推される方にも推す方にも感じます。わたしもわずかでもそのようであるように、見習いたいものです。

2024_自動車殿堂02

式典の写真は
「二輪文化を伝える会」の松島 裕さんが撮ってくださいました。


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“The Story Behind the ND Roadster with Mr. Nobuhiro Yamamoto”






I wrote about Nobuhiro Yamamoto, the chief developer of the ND Roadster *MX-5/Miata, in a Japanese magazine, and we created an English version for Miata people in English-speaking countries.

According to Yamamoto, he was able to complete the ND Roadster exactly as he originally envisioned, thanks to the excellent teamwork of everyone involved in its development—without compromises from management or technical limitations.

Surprisingly, for such a large company, the unique value of the Mazda Roadster also lies in the fact that management members’ names are recognized as part of the project.

Of course, it was Mr. Yamamoto, as development director, who drew out the full power of this teamwork.

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On September 28, 2014, an unveiling event took place for the new Mazda Roadster *Miata/MX-5, just days before its release. Before a sea of eager fans gathered at the venue, the team members who had brought the Roadster to life stood in a proud row. Among those introduced one by one was an employee responsible for cost management—an unusual sight, as it was the first time I’d seen someone in that role celebrated on stage alongside a brand-new car.

For engineers and designers who chase technical ideals, the finance department, which tightens the purse strings, often feels like a formidable barrier they must overcome to realize their visions. This was certainly true during the development of the new Roadster. It was Nobuhiro Yamamoto, the chief engineer steering the team, who made the bold decision to recognize that finance employee as an interral member of the car-making crew, inviting the gathered fans to celebrate alongside the freshly completed vehicle.

新達人151山本修弘メイン

Yamamoto's roots lay in a farming family in Kochi, Shikoku. Horses and cows roamed around him, and his childhood was spent surrounded by fields, helping with seasonal farm work, all while growing close to various machines. Among these, vehicles captured his imagination.
"I remember when I was in kindergarten, there was a guy in the neighborhood who rode a motorcycle. Every time I saw him, I begged to ride it, again and again. One day, he finally said, 'Sure,' and let me straddle the tank. It was a two-stroke Tohatsu. As I felt the vibration of that iron horse beneath me, cutting through the wind, I thought, 'Wow, this is incredible!' That moment filled me with excitement. I can still recall it clearly—that was my first encounter with a car—or rather, a motorcycle."

In those days, it was customary for everyone in farming families to pitch in during the busy seasons, and long before he was old enough to hold a license, Yamamoto was already driving small motorcycles and mini trucks. Like many boys fascinated by machines, he often took apart the farm equipment used for their work, sometimes getting scolded by his father when he couldn’t reassemble them. Then, in his second year of junior high, he stumbled upon the news about the "rotary engine from Toyo Kogyo."
"I immediately applied for a free booklet titled 'Knowledge of the Rotary Engine,' and they sent it to me. As a kid, I didn’t fully grasp what made it so special, but I felt this surge of excitement, as if something extraordinary was about to begin! Back then, when the dentist near my school parked his Mark II 1900SL and my teachers drove Publicas and Corollas, the arrival of the Familia Rotary Coupe made a huge impression on me. Even as a child, I was mesmerized by this car—it was the first in the world to feature a rotary engine, and it was unlike anything else out there."

After graduating from a technical high school, Yamamoto's dream came true when he joined Toyo Kogyo, earning a coveted position in the "Rotary Engine Research Department."
The years Yamamoto spent deeply immersed in the development of the rotary engine provided him with a treasure trove of experience.
“The fulfillment of working on an engine that only we were developing came hand in hand with the immense challenge of having to resolve every issue on our own. It was as if I was living and breathing rotary engines. Whether I was at the company or at home, my mind was constantly occupied with thoughts of the rotary engine. That was the rhythm of my life.
The rotary engine also taught me that in the realm of technology, a correct answer always lies at the end of a logical path, and there are no shortcuts to reach it. I wrote down the words, 'All our actions must be honest and sincere,' and placed them prominently on my desk. Those words truly encapsulated the way the members of the Rotary Engine Research Department conducted their lives.”

The rookie engineer, who had once devoted himself entirely to rotary engines day and night, eventually evolved into a seasoned engineer, overseeing the development of vehicles as a deputy chief engineer, including the second and third generations of the Roadster as well as several SUVs.
More than thirty years after he had submitted his fervent petition declaring, "I want to work on rotary engines no matter what," one day he received a directive to lead a project focused on developing a new FR layout platform, aimed at realizing the next generation of open cars and coupes.
“Without any notice or hint, they simply stated, 'This is the situation, so please take care of it.' They didn’t specify a name like the next Roadster, but it was clear that the project was intended for the advanced development of vehicles such as the Roadster and RX-7. There were no emotional discussions like, 'Do you want to give this a try?' or 'Think it over.' It was delivered as part of a routine personnel shift. I responded, 'Understood, I’ll take it on.' Three days later, I found myself in a new office, sitting at a different desk.

This marked the beginning of a completely different chapter in my career, one that shifted my focus from the specialized engineering field I had known to the broader realm of platform technology development. It all began abruptly at the end of June 2007.”



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Due to the impact of the Lehman Shock, the project team led by Yamamoto was temporarily disbanded in its second year. However, they later resumed their efforts with a renewed focus and a clear development goal: the release of the Roadster.
"Looking back now, those were incredibly intense days. Yet, as the chief engineer, I felt that handling this level of responsibility was just part of the job, and I accepted everything with a sense of calm. At least, I never felt like I was under unbearable pressure."
During the development of the Roadster, I had the opportunity to attend a meeting where Yamamoto, alongside engineers from various fields, shared their progress and current challenges. His sharp, relentless critiques flowed one after another, his expression serious throughout the discussions. The engineers’ responses were equally fierce, reflecting the harsh realities they faced in their work.
On the other hand, Mr. Yamamoto, the chief engineer of the development team, had to submit every proposal for approval from the executives of each department while also considering the realities on the ground. Imagining the immense pressure he must have been under, I found myself compelled to ask Yamamoto about it.

“As chief engineer, my role isn’t just about making things; it’s about setting goals. When I first took on this position, I didn’t fully grasp what it entailed. So, I went around asking many senior colleagues for their advice. Some of them had previously disagreed with almost everything I tried to do in my past work. Yet, no matter how much you ponder something unfamiliar, understanding it is often out of reach. In those moments, the only option is to seek guidance from someone who seems to know and let them teach you. Everyone took the time to help me, generously sharing their wisdom.
You shouldn’t merely focus on solving the immediate problems to complete the car. Instead, establish a clear vision of the type of car you want to create, and then think about what needs to be done to make that a reality. Once the vision of your ideal car is set, raise it high so that everyone involved can share in it, continually guiding the engineers along the path toward that goal. ...I learned many other valuable lessons about what I needed to do as well.

I decided to make the new Roadster the most fun-to-drive car in the world and raised that as our goal. I concluded that the key engineering element to achieve this was lightness, and I devoted myself to inspiring everyone to bring that vision to life, guiding the necessary steps along the way. Over time, I also realized that when team members are passionately working toward a shared goal, it’s often better to trust them rather than interfere unnecessarily. Simply saying, 'I’m counting on you,' can yield surprisingly positive results."
Would sharing this kind of on-the-ground perspective help secure approval from the executives?
“No, there’s no such thing as lowering approval requirements based on the situation. The performance and budget targets set at the time of initial approval are essentially non-negotiable. If we don’t meet those, we can’t present it to the executives.


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The one-ton weight limit was incredibly challenging. Should we just go all out and use 13-inch wheels, eliminate the power steering, or even scrap the air conditioning? Perhaps we could replace certain parts with aluminum. But no, that would jeopardize our cost targets.
The executives were not going to overlook such issues. 'You said you’d keep it under one ton. Are you really going to set an unachievable goal and leave your team stranded? Why is this costing so much? Drop the LED headlights, forget about aluminum, reduce the number of prototypes—there’s too much labor involved. If you invest this much in a 1.5-liter engine, how can you expect it to be affordable? Get both the weight and cost within target!'
I had to face all of those comments head-on."

So, wasn't it like being under unbearable pressure?
"No," he replied thoughtfully. "But afterward, they’d always come back with suggestions like, 'Couldn’t we reduce the weight by doing this?' or 'Once production starts and we hit our sales targets, the price of the LED lamps will drop significantly, so let’s use that to meet the target.' Both the engineers on the ground and the executives have their own roles to play, with things they must say and things they can’t. But the most crucial aspect is that everyone—both in the field and in management—is aligned toward the same goal. The Roadster had to embody a specific vision; there was no way we could release a car that simply came together by chance. Each person contributed their thoughts on what needed to be done to achieve our objectives, and that’s how we completed the fourth-generation ND Roadster."


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After pausing for a moment, he took a breath and continued, "When I first joined the company, I was asked to write down my goals for the next ten years. I wrote in my notebook, 'I will become an engineer who makes the best engine in the world.' But I ended up on a different path from what I had envisioned, and yet, I still had the best time of my life. You never know what tomorrow will bring, and the reality is that, in the end, only the results matter. If all you can do is look back later, you might as well give it your all and enjoy the journey, reflecting on it when it’s over—that’s how I see it.
And let’s not forget that you are where you are because of the people around you. Without gratitude for that, nothing will go well. That’s what I feel as I look at the Roadster, completed just as we all imagined."

"...Not a Car That Simply Came Together, but the Roadster Crafted Precisely as Envisioned: A True Testament to Teamwork."


text:Munehisa Yamaguchi
photo:
Masanori Kamide
special thanks:MAZDA
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85歳、現役「クルマの達人」






もう初夏の頃のことですが電話を掛けたら、20年も前に原稿を書かせていただいたわたしのことを憶えてくださっていたことが、驚くやらうれしいやら。なにしろ、御年85歳です。すぐに大阪まで顔を見せに行ってきました。なにしろ85歳ですから、20年前にインタビューを取ったときにすでに65歳ですから、工場に出ているよと言われても、看板役としてのお務めかしらと想像していたら、ポルシェのエンジンルームに半身を突っ込んで工具を動かしているじゃないですか。さらに2週間後くらい、カメラマンといっしょに改めて訪ねて取材したときの記事がようやく書店に並びました。

先週の金曜日に携帯電話が鳴りまして。誰かと思ったら鮎川さんで、さっき本が届いた、とてもうまく書いてくれてありがとう、尻がこそばい、と喜んでくれてまして、10冊くらい買いたいというので編集部に手配しますと返しつつ、夏の取材のとき以来、少し話しました。


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鮎川日出夫さん、戦前の生まれです。自動車の整備士が”修理屋”と呼ばれて阿呆でもできる糞みたいな仕事と聞かされていた幼少期の後、求められる人材となった高度成長期とモータリゼーションの時代を経て、やり方次第で会社員の何倍もの大きなお金を稼げるようになり、今に至るまでの全期間を現役メカニックとして過ごしてこられました。

今号の「クルマの達人」は、鮎川さんに物心がついた頃から……すなわち80年分くらいの日本の自動車周りの気配をなぞりつつ、ポルシェのメカニックとして多くの人が頼ることになった背景を4ページを使って描きました。同じくらいの時間軸でまた別のメカニックの物語を綴ることは、なかなか難しいことだと思います。カーセンサーエッジ誌12月号に載ってます、ぜひ部屋に持って帰ってゆっくり読んでください。

写真は、上出優之利さんです。

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スーパーフォーミュラ、観に行きました。






レースを観戦しに、富士スピードウェイに行ってきました。
「スーパーフォーミュラ」といって、F1のような格好をした1人乗りのレース専用車でバトルするカテゴリーのうち、国内最高峰のシリーズ戦です。

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レースウィークのサーキットを訪ねたの、調べてみたらたぶん30年ぶりくらいです。大学を出て最初に就いた仕事が"レーシングニュース"というオートバイと自動車のレースを扱う紙媒体の編集記者で、その時にできた縁で"ケガニレーシング"というレーシングチームのマネジャーを務めました。20代前半は取材をする人として、後半はレースにエントリーする立場で、毎週末のように日本全国のサーキットに出掛けていたのですが、マネジャー職を辞めてからは町を走るクルマたちの周辺事情に関わる仕事にどっぷり浸ってあっという間に30年経ったというわけです。

これだけ時間が経っていれば当然のことかもしれませんが、レースウィークのサーキットの様子はずいぶん変わっていました。はい、ずいぶん素晴らしく変わっていました。

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わたしが記者としてサーキットに通い始めた頃、レースイベントというのは、大好きなレースに夢中になっているオヤジたちと、彼らがやっていることをお金を払ってまで覗きたいというマニアックなオヤジたちの集い、という様相でした。エンターテインメントとしての要素がなかったわけではありませんが、せいぜいパンフレットが売られていたり、スタンド裏に焼きトウモロコシの屋台が出ていたり程度のことでした。サーキットの仕事はレース場としての場所貸しで、運営者の仕事は”競技”の円滑な進行役というイメージでほとんど間違っていないと思います。

わたしがケガニレーシングのマネジャーを務めていた頃、サーキットに足を運んでくれたお客さんにもっと楽しんでもらおう、お客さんとチームの間にある“あっち側のオタクとこっち側のオタク”みたいな溝を埋めよう的な取り組みが、たくさん試され始めたように記憶しています。パドックウォークが開催され、スターティンググリッドに並んだレーシングカーを紹介する格闘技のリングコールのような雄叫びが響き、ドライバーたちがチームグッズを観客席へ投げ入れ……。他にもいろいろな試みがあった時期がありました。

けれども、プロのエンターテインメントとしては、ちょっと家族的過ぎたように思います。リングにあがる前のボクサーが観客席を回って挨拶をするような、ミュージシャンがコンサート会場の入り口に立ってパンフレットを手渡しするような、なにかそういう感じを覚えたんですね。実際、チームマスコットを観客席に投げ入れるレーサーたちの姿はぎこちなかったですし、スタンドのファンにひと言どうぞ! と大声でマイクを向けられてしどろもどろになっているレーサーの姿は見るに堪えないものでしたし。

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2024年、30年ぶりに目の当たりにしたスーパーフォーミュラ、エンターテインメントとしての完成度が格段に高まっていました。各チームはレースを戦うプロフェッショナルとしての仕事に完全に集中する環境の中で、凜として輝いていました。サーキットに詰めかけたお客さんは本番のステージ上で100%のパフォーマンスを目指すプロフェッショナルたちの姿を、歓迎されている観客として楽しめる範囲の中で存分にエンジョイしているように見えました。この適切な距離感が生む魅せる側と観る側の緊張感が、モータースポーツのエンターテインメントとしての質を猛烈に高めているように感じました。

なにしろ30年ぶりの浦島太郎ですから、妙なことを言っているかもしれませんが、モータースポーツ、かなりトキメクじゃないかって素直に感じた次第です。

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それと、チームで活躍する女性の姿がとても増えたように感じました。各セクションのマネジメントに気を張る女性、職人的な表情の手で握る工具に目を凝らす女性、華の鮮やかさでストレートに観客にエンターテインする女性、等々。わたしがマネジャーをしていた頃よりもずっと多岐に渡っているような気がします。

そしてこれは性別に関係ないことですが、求めてその仕事に就いている人が放つ波動をたくさんたくさん目の当たりにすることができました。努力することなく望む気持ちを持たず仕方なくこの仕事に流れ着いた、というような人がただの一人もいない働く姿たちで構成される組織、素敵です。社会人としてデビューする前に、ぜひ自らの肌感覚に覚えさせておくべきだと思います。

プロがプロに徹する環境の中でますます輝き、楽しみは楽しみを満喫できる環境の中でもっと楽しくなる。ほぼ同条件のレーシングカー同士で争われるレースが、ドライバー同士の腕前ガチンコ勝負の気配満点で、それはそれは白熱した大興奮のバトルを楽しませてくれたこともよかったのですが、このキラキラとした人たちの光景を満喫した久しぶりの富士スピードウェイでした。

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焼けぼっくいに火が付きませんように、と気持ちを落ち着けているところです。
素晴らしい機会をいただけたこと、感謝しています。

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パワーアンプを車内のどこに置くべきか。






今はたった1つだけになった雑誌の連載、歳を重ねるごとに産みの苦しみが大きくなってきてます。以前に比べると圧倒的に書きの量が減ったことが原因なのか、単に脳が寝ぼけてきているのか。いずれにしても、何時間Macの前に座っていても一歩も進まないようなときは、いったん別のことに集中するしかない性分は昔から変わりません。

ギターを弾いたり本を読んだり……もできない気分のときは、溜まっている別の仕事に掛かります。例えば、ヤマスピ関係のこと。複数の別作業が団子になっていて、こっちはこっちでアタマがこんがらがりそうですが、10月末〜11月中にI.Y.A.Garage で取り付け&セットアップを依頼するクルマ用のパワーアンプボードを仕上げることにしましょう。。。。

で、3つ仕上がりました。

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左上は、現在BassPLUS+までのDSPセットアップで楽しんでいただいているNDロードスターオーナー氏が、2024年モデルND-RFに乗り換えるということで、この機に3Dシステムを実現しましょうという提案を実現するためのアンプボードです。この方はすでにSR4.500というパワーアンプに、AP4.9bitというDSPパワーアンプを加えたシステムを組まれていてですね、とても気に入っているSR4.500で鳴らすメインスピーカーの音を残したいとのこと。確かに、audison製のSRシリーズというパワーアンプは、ぐいぐいととても力強い音傾向があって、これは力強さと繊細さを兼ね備える傾向のAP FやAFシリーズとはまた違う趣がいい感じなんです。ロックやブルース、ソウル、ゴリゴリ系のジャズの熱い要素に痺れちゃう人には、この深イイ感じの鳴り気配、ほんとうにお勧めです。アメリカ製だった頃のロックフォードのアンプと同傾向、ギターならストラトキャスターではなくレスポールのフロントみたいな……わかりませんね。ともかく、3D化のために必要な9チャンネル分を確保するために開発車から外したJBLパワーアンプを追加したシステムで組むことにしました。

上記とおなじロードスターのための右となりのアンプボードは、AP 4.9bitというDSPパワーアンプをトランク右側の内装材の裏に取り付けるためのものです。NDロードスターのRF(ハードトップ)モデルでは、車内シート後方中央の小物入れが車両の構造上パワーアンプ収納のために使えません。現在お乗りの幌車では小物入れ内に設置してあったのですが、新しいクルマではトランク右側に引っ越ししてもらうことになりました。

その下は、これも2024年モデルのND-RFに装着するためのアンプボードです。AF M8.14bit、AF M1Dを使ったNDロードスター用の3Dシステムは、現時点でわたしが実現できる最高峰のNDロードスターのための音楽環境です。

右となりの小さなボードは、B-CONというハイレゾBluetoothの受信機です。LDACという規格を備えたBluetoothガジェットからの電波を受信して、光デジタル出力します。光出力にはTosLinkという規格の端子が使われるのですが、これがとても弱々しくて不安定な端子なんです。東芝が1983年に開発した規格ですが、家庭用としての規格で、車載される可能性などイチミリも想定してなかったんでしょうね。


で、実はここからが本題です。相変わらずの長大枕でごめんなさい。


カーオーディオのパワーアンプ、どのような取り付け方がベストなのでしょうか。

わたしは、5つのことをテーマとして自分に課しています。

A)車両に加工・改造を施さないこと。
B)車両の機能をできるだけ残すこと。
C)車両の純正デザインをできるだけ崩さないこと。
D)交通事故という万が一に徹底的に配慮しておくこと。
E)格好がいいこと。

A)は、yamaguchi speaker system 全体を通じてのテーマです。豊かな音楽環境を実現することは多くの人にとっての夢であり、わたしにとっての目標でもあります。けれどもそのために、大切な愛車に加工や改造を加えるようなことは絶対に避けるべきだとも思っています。すでに何十年も生き残ってきた貴重な車体はもちろん、今は新車でも長く乗り続けるつもりがあるなら、悪いことは言いません、切った貼ったの改造は避けるべきです。元には戻らない傷痕を前に残念な思いをするときがきっと来ます。もし売却することになったとしても、加工や改造の痕跡は100%マイナス査定です。オーディオに限らず、どんなに高性能・高価格な装備品によるカスタムであっても、車体自体は無加工・改造であることがプラス評価の最低条件です。

B)例えばワゴンやバンのラゲージスペースを占有してレイアウトされたアンプ群や、トランクを開けると荷物の代わりに鎮座しているサブウーファーボックスを、わたしは好みません。クルマには、人や荷物が移動するというそもそもの目的があります。純正オーディオやカーナビ、ハンズフリーフォンなどの機能にも、快適なドライブのための工夫が盛り込まれています。そのような、もともと車両に備わる機能をできるだけ純正のまま残すこと。言い換えれば、スピーカーシステムをインストールすることによって消滅してしまう、そのクルマならではの機能・性能を可能な限り少なくすることをとても重視しています。例えばあの頃系メルセデスでは、セダンでもワゴンでもラゲージスペースをほぼ100%確保したままの取り付け方法を実現しています。マツダ・ロードスターやポルシェ空冷911でも同様です。NDロードスターでは、DSPフルシステムを組んだ場合でも、マツコネに備わる機能は完全に使えますし、例えばシートをフルバケットタイプに変更した場合でも、後付け感満載のスピーカー移設を行うことなく、ナビの音声案内やハンズフリーを可能にする方法を実現しています。

C)自動車メーカーのエンジニアやデザイナーと膝を付き合わせてじっくり話す機会が常套の仕事を長くしてきたことは、わたしの自動車に対する考え方にとても大きく影響しています。例えばデザイン。そのクルマを買ってくださったお客様が四六時中目にすることになるインテリア、中でもダッシュボードと呼ばれる前方に拡がった空間のデザインは、ほとんどの場合まったく手抜かりなく、担当するデザイナーたちの100%の力で造形されています。ヘッドライトを正面に見据えて眺めたときの外観の表情に勝るとも劣らない、ここがデザイナーの腕と感性の見せ所だったりするわけです。そして、その両サイドに腕を拡げたようにインテリア全体のデザインがつながってゆきます。ツィーターもメインスピーカーも、純正ままの内装材の向こう側に隠れるように取り付けられるように設計するのは、自動車メーカーのデザイナーと、デザイナー発の造形の実現を可能にしたエンジニアへの、わたしなりのリスペクトの証だったりします。言うまでもなくオーナー氏がそのクルマを選んだのは、わたしの作る音楽空間の遙か以上に、そのクルマが気に入ったからに他ならないからですものね。そう、パワーアンプの話でした。もちろんパワーアンプボードも、リアトレイの上に置いたり、ラッゲージルームの印象が変わってしまうほど存在を主張させたりしません。

D)クルマは100km/h以上の高速で、人を乗せて、進路を約束された軌道上ではないフリースペースを、自らもそうであるように様々な事情や状況や都合の下に繰り出してくる不特定多数の未知の人たちと混在した状態で移動する乗り物です。つまり、不可避の交通事故が発生する可能性を否定することはできません。そのときに、わたしが車両に取り付けたものが、それを選んでくれた方やその方の大切な人たちを傷つけるようなことは絶対にあってはならないと考えています。これも、自動車ジャーナリストとして自動車を研究するエンジニアたちとの交流が与えてくれた知見ですが、いわゆる衝突を伴う交通事故の発生時、車内はとんでもない事態に陥ります。荷物の類はもちろん、しっかりと固定されていないあらゆるものが勢いよく飛び回ります。例えば50km/hで衝突事故を起こした場合、近年の車体は衝突の加速度を直接乗員に与えないように、グシュグシュと潰れながら衝突エネルギーを時間で分散させる手法で命を守ります。けれども車内に無造作に置かれたものたちは、衝突した速度で射出されて、もはや空中に飛んでしまったそれらの勢いを抑制する理屈などなく、何かにぶつかったときに急激にゼロkm/hの速度まで減速します。もし乗員の顔面に2kgほどあるパワーアンプ、つまり金属の塊が50km/hで衝突したら……。あるいはシートの下に簡単に設置されたパワーアンプが、何かの衝撃で前方に滑り出してペダル類の操作を妨げるようなことになったら……。そういう不幸の原因になりたくない気持ちがあることは、自動車用品を設計する人に絶対に求められる条件だと思います。わたしが作るパワーアンプボードは、ただの取り付け板ではありません。すべて、ボルトを使ってしっかり車体に固定される仕組みになっています。マジックテープで貼り付けるみたいなことでいいわけ、ないだろうと、わたしは考えます。そして、それらを車両への加工・改造ゼロで実現する方法を見つけるのが、わたしの小さなやりがいだったりします。

E)まあ、見た目の格好がいいか悪いかは、つまり好みか好みでないかということで、各人の嗜好の違いによるところが大きいという意味では、なんという稚拙な課題だとも思うわけです。なのでこの項は、上記A〜E)までを実現するために与えられた条件、制約の中で、ヤマグチ的にそう感じられる精一杯の努力義務的なヤツだと思ってください。それでも、手に入れようと感じる憧れや、手にしたときのトキメキ、自分のものとして日々を共に過ごす満足感優越感達成感、とか、そういう事ごとを高めるための要素として、格好いい! ことは、とてもとても大切だと思うわけです。この項に関しては、まあそれだけです……w


上記の要素を満たすために、例えばNDロードスターでは、下の4つの取り付け方法を用意して、複数台のパワーアンプを使用する場合は、オーナーのクルマの使い方に合わせた組み合わせで対応するようにしています。

1)NDロードスターのパワーアンプ取り付け場所として、最初に設定したのがシート後方中央の小物入れです。〜2023年モデルCD/DVDプレイヤー有、〜2023年モデルCD/DVDプレイヤー無、2024年モデル〜、の3種類ボード形状があります。ND-RFモデルでは、この場所を選択することができません。
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2)は(1)の次に設定したのがトランク左奥壁面です。SR5.600、SR4.500の外寸が大きなパワーアンプは、この位置への取り付けが標準となります。この場所の裏側には、給油口から燃料タンクへつながるホースやパイプ類があります。万が一、トランクスペースが全壊するような追突事故に遭った際にもそれらを傷つけることがないよう、アンプボード背面に突き出すねじの高さや形状などに細心の注意を払ったデザインとしています。もちろんAP、AP F、AF M/C といったわたしが使用しているすべてのパワーアンプは、この場所に設置することができます。

3)は、2台目のパワーアンプを設置するために(2)の次に設定しました。SR5.600、SR4.500 以外のすべてのパワーアンプに対応できます。
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4)内装材の裏側に見つけたわずかな空間を利用したこの設置位置は、内装材を組み戻すとパワーアンプの存在を完全に隠すことができます。すなわち、トランク容量を完全に100%確保したままの取り付けが可能になります。ヤマスピを愛用してくださっているマツダ元副社長・藤原清志氏のNDロードスターには、(1)と(2)の組み合わせの3Dシステムをセットアップさせていただいたのですが、後日「機内持ち込み用スーツケースx2個の積載が可能」という開発コンセプトがキープできなかったのは残念だ、というコメントをいただきまして。わわわ、そういえばそのコンセプトを自分も知っていたはずなのに、自分で設定した(B)のコンセプトを守れていないじゃないか!とかなり焦って編み出した取り付け方法だったりします。AP、AF Cシリーズは木製のボード、AP F、AF MシリーズはCFRP製のボードとなります。大型のアンプを搭載するCFRPボードの裏面には、バンパーカバーの裏側に隠れている車体既存の空気抜き口の辺りと重なる位置にアルミ製の放熱フィンを取り付けています。(1)が使える幌車であれば、(1)と(4)の取り付け位置を組み合わせることで、いちばん下の写真のようにトランクスペースを100%確保したまま、ハイパワー仕様の3Dシステムを完成させることができます。つまり、2人分のスーツケースをトランクに収めてヤマスピが提案できうる最高峰の音楽空間で2人の気分を盛り上げながら空港に向かうことができる、というわけです。

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そうそう、ご紹介したこれらの方法すべて、もちろん内装材の切れ込みひとつもなく、車両無加工・無改造で実現しています。いつでも、完全に純正の状態に戻せます。実はその実現がなにより難しいことだったり、します。



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Sクラスに乗るということ。






前回のブログで、大昔に雑誌へ寄稿した原稿をそのまま紹介してブルーノ・サッコ氏を偲びました。書き手にしてみれば、過去恥部のカタマリのような文章ですが、一部の方々からとても懐かしむ声が寄せられていまして。いまでも似たような雑誌はあるでしょうし、なんならインターネットをさらえば自動車の記事なんてゴマンとあるじゃないかと思うのですが、まあ褒める人あれば今の若いもんにもそれほど引けを取らない文章なんじゃないかと思い違いも簡単なわけで、ちょっとオヂサンうれしかったりもした次第です。

15年ほど前までは、とにかく朝から晩まで書いて書いて書きまくっても片付かないほどありとあらゆる種類の原稿を納めていたので、同程度のクオリティの原稿ならば、Macの中にごっそり残っています。うれしかったついでに、それほど喜んでくれる人がいるのならば少し掘り返してみてもいいかなと思い始めています。文字数の制限や、編集部や制作会社からのリクエストで当時の原稿に盛り込めなかった取材データの中に無数にある興味深い話を交えながら、またYOUTUBEに番組でも作って紹介するのも楽しいですね。

一部にびっくりするほど博識、経験豊富な人がいるのは確かですが、それ以外のほとんどの場合は自動車雑誌の編集部員だから自動車に詳しいなんてことはないので、テーマだけ与えられて、記事の切り口を含めた構成をまるっと放り投げられることも多かったので、お陰様でと言っていいやらどうやら、誌面作りに必要なコンテやら挿画を作るための原画として作ったデータもたくさんMacの中に残っています。そういうものを必要に応じてお見せしながら裏話と共に話しても楽しいと思います。。。ん、見てる人も楽しいのか? わたしは楽しそうだなと思っているんですけど。

で、以下はたしか2009年にオンリーメルセデス誌に寄稿したものです。例によって「Sクラスの特集をやりたいけど、旧い世代は任せます。切り口も含めて考えて4ページで提案してください」みたいなオーダーだったと思います。そのときは、対外的なSクラスの価値と社内に於けるモデルごとの商品としての役割という2つのことを、ホイールベースとリアシートの居住性の変遷から探ってみよう、という提案をして記事を作った記憶があります。

以下、当時の入稿原稿そのままです。挿画や表は、作画のためにこさえたデータなのでいい加減な感じで失礼します。マイバッハの写真は、1997年の東京モーターショーでプレス向けに配布された広報資料から使用しています。

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Sクラスに乗るということは、どういうことなのだろう。

メルセデス・ベンツは、同種の乗用車を製造するメーカーの中における自動車ヒエラルキーと呼んでもいい格付けの中で、頂点に君臨するメーカーだ。ロールスロイスやベントレーは、もはや純然たるメーカーではないし、長い歴史に裏付けられた格調の高さや、新型車が発表されるたびに盛りこまれる最新技術の開発力をみても、これは明らかだ。また、もとよりフェラーリやポルシェに類するクルマはメルセデス・ベンツには存在しない。


そして同様に、メルセデス・ベンツは、自社のモデルの中にも厳然たるヒエラルキーを与えている。言うまでもなく、Sクラスは4ドアセダンというカテゴリーにおいて、頂点に立つ。そのポジションは、モデルの新旧を問わず生き続ける。97年に東京モーターショーで発表されたマイバッハのコンセプトカーのボンネットには、スリーポインテッドスターが輝いていた。けれども、Sクラスを超える車格のモデルがラインナップされることが社内で認められず、マイバッハという別ブランドからの発売に至ったことは有名な話だ。世界の頂点に立つメルセデスの中の頂点に格付けされた格式を手に入れること。それがSクラスに乗るということなのだ。

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1997年の東京モーターショーで発表されたマイバッハは、当時メルセデスの横浜デザインセンターに在籍していたオリビエ・ブーレイがまとめた。障子をイメージさせるルーフなど、和風な意匠も散見されるマイバッハは、この時スリーポインテッド・スターを冠し、Sクラスの上に立つ特別なメルセデスとして発売される予定だった。けれどもメルセデスにおいてSクラスを超えるセダンの存在は認められないという社内の方針により、マイバッハという別ブランドの下で発売された。その時メルセデスでの発売を主張した人物に、ダイムラーAGの現C.E.O.ディーター・ツッチェもいる。このことは、Sクラスとマイバッハの今後の関係に少なからず影響を与える可能性がある。

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メルセデスにおける頂点のモデルがSクラスと命名されてから、現行モデルで5世代を数える。そして、歴代のSクラスにはショーファー、つまりリアシートに招いたゲスト、あるいはドライバーに運転を託したオーナーのための快適な移動空間という役目が与えられ、そのために相応しいロングホイールベースモデルが用意された。ところが1モデルだけ、ドライバーズカー方向に発想をシフトしたモデルが存在する。4代目、V220である。メルセデスは、同時期に発売が開始されることになったマイバッハに純粋なショーファーとしてのポジションを与え、V140までが担っていた最高級のドライバーズカーとショーファーの二役を分離した。もっともW220においてもマイバッハまでは必要ないという顧客のために、ロングホイールベースモデルのV220は変わらず設定されたし、全席においてSクラスの名に恥じない快適性は保たれたが、先代よりもグンと小振りになり、これまで拡大の一途を辿っていたホイールベースが初めて縮小された。その影響は、アウトバーンにおける超高速走行時の効率を高めるための滑らかに空気をいなすルーフ後端の形状と相まって、後席頭上の空間に顕著に表れた。このことはショーファーとしての魅力を薄めることにつながる結果となった。この1点において、V220のSクラスとしての資格に疑問を唱えるメルセデスファンが存在することは確かだ。果たして、V220をどう判断するか。

少なくとも私は、V220も歴代のモデルに並ぶSクラスの資格を備えていると思っている。確かにショーファーとしての用途を優先したい層に、V220を積極的に勧めることはしない。けれども最初にお話ししたように、Sクラスを所有する悦びとは、まず第一義に最高峰のメルセデスという格式を手に入れることである。言うまでもなく、その格式とはメルセデス自身が授けるものだし、そのためにV220に盛りこまれた快適性や高い安全性、操縦性は、紛うことくSクラスたる高次元なものだ。

そして、後継のV221が再び拡大方向にシフトしたことをことを知るにつけ、Sクラスというヒエラルキーを享受しつつドライビングできるコンパクトなセダンが、近い将来において登場することは考えにくい。さらにV220がすでに新車ではなく、中古車としての購入の動機の多くがマイカーであることを考えると、ショーファーとしての後席の意義はそれほど大きな問題にならないのではないか。V220、コンパクトとはいっても、家族のためのセダンとしては十分以上なサイズであることは、一見すれば十分にお分かりだろう。

最後に1つ。いや私はV140派なのだ、というのであれば、それはもちろん大いに結構。もし私が子供であれば、ダイアナ妃も座ったあの広大な後席に私を乗せてドライブに出かけてくれる父親など、夢のまた夢の贅沢なのだから。


オンリーSクラス車両
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歴代のSクラスにおけるホイールベースの変遷をW126以降のモデルで比較してみた。W126が先代のW116より、すでに100mm長いホイールベースを備えて登場していることを振り返ると、ホイールベースを前モデルから縮小したのはW220のみである。もっともW220であってもW126と同等のホイールベースを備えるロングホイールベースカーであるが、高速走行時の良好な空力特性を持つルーフラインが与えられ、その結果それ以外のモデルにくらべて後席頭上のスペースをわずかながら狭めている。後席シートバックの角度と乗員の頭の位置が示す線に、ショーファーとしての資質の大小を見ることができる。その背景にマイバッハの存在があったことは、言うまでもない。




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ブルーノ・サッコ氏と大好きなクルマのデザイン。






ブルーノ・サッコ氏が亡くなった。

このブログを読んでいる皆さんの多くは、あの頃系メルセデスの愛好家だと思いますので、氏については今さら説明の必要がないでしょう。いろいろ書きたいことはありますが、けっこうな夜中になってしまったので、昔書いた原稿をそのまま貼り付けておきます。2009年にジャーマンカーズ誌に「ネオクラシック特集」用として20ページ分くらい寄稿したもののうち、デザインについて書いたものです。入稿時のものをそのまま貼り付けますので、誤字、脱字等についてはご容赦ください。誌面の切り抜きはどこかに紛失してしまったので、写真はメルセデス・ベンツのメディア用サイトから拝借したものを使用します。


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ネオクラシックな世代のドイツ車の魅力、まずはデザインから検証してみよう。目の前に、アルピナB9/3・5クーペを用意した。GC読者の皆さんには説明の必要もない名車。言うまでもなく、BMW6シリーズ・モデルE24をベースに、ブルカルト・ボーフェンジーペン氏率いるアルピナが、選ばれし特別なオーナーのために仕立てた大人のハイパフォーマンスロードカーである。

世界でもっとも美しいクーペと称されたこの6シリーズのスタイリングは、登場から30年以上が経た今日に至ってもなお、堂々とその英明を引き継ぐことができる新たなクーペの存在が怪しいほど、美しい。

撮影のためにスタジオに持ち込み、日常ではあり得ないほどの強い光で照らしてみる。すると、ハイライトはただ白く跳ね返るだけでなく、そこに必ず特徴的なフロントマスクへと収斂するエッジが現れることに気づく。躍動感にあふれる。エッジを挟んだ対称面の黒い影の中にさえ、見えないはずの線を知らず知らずのうちにイメージしてしまう。深い。

スタジオの壁ぎわまでゆっくり十歩さがって、クルマのそばを忙しく動く撮影スタッフ越しに静かに眺める。人間がそばにいることで、このクルマは、ただ美しいだけでなく、この上なくふくよかで、安心感が漂い、涙が出るほどのやさしい表情になる。気持ちが落ち着いてゆく。

工業製品におけるデザインの難しさは、カタチが機能を包むためのスキンであるという前提を越えられないことにある。デザイナーたちは、まずその壁に立ち向かう。エンジンやトランスミッション、サスペンションやタイヤなどの機関系コンポーネンツは、車両のコンセプト段階で決定された性能を発揮するために、すべてに最優先してレイアウトされる。もちろん乗員や荷物の空間も適切に配置されなければならない。

予算も限られている。たとえ素晴らしい造形が可能になることが分かり切っていても、決められた制限を超える素材や成形方法を用いることはできないし、それが量産を前提としたモデルであれば、予算管理は生産プロセスまでを含むことになり、デザインの自由度はますます収縮する。結果、大方の工業製品のデザインは、エンジニアと予算管理者と、デザイナーのせめぎ合いの中で、妥協の産物として決定される。

アーティスティックな才能の丈を存分に表現できるというわけではないという意味で、工業デザイナーは芸術家とはまったく異なる職業で、したがって生み出される製品は芸術作品などであるわけがない。目の前のアルピナも、例外ではない。

ところが、ときどき奇跡は起こる。目の前のアルピナが、まさにその一例である。ここまで普遍的な美しさを放つ工業製品は、本当に珍しい。

いよいよ本題である。なぜBMW6シリーズ・モデルE24は、こんなにも美しく誕生することができたのか。奇跡であるとしても、その背景に奇跡に結びつく事実はなかったのか。そもそも、6シリーズの美しさは、本当に奇跡の賜なのか。そして、なぜ次々と誕生してくる新しい世代のクルマたちが、このクーペを超える強い個性で“世界一美しいクーペ”の座を奪うことができないのか。

その答えを見つけるために、興味深いストーリーを紹介しよう。ネオクラシックは、なぜ美しいのか。



“1933年”という
奇跡のキーワード

僕らが大好きなW124やW201、W126などのGC的世代のメルセデス・ベンツは、ブルーノ・サッコというイタリア生まれのデザイナーの作品だ。サッコはそのほかにも、R129やW140も手がけていて、まさにGC読者が夢中になっているベンツの造形は、すべて彼の手によるものだと言っても過言ではない。

'58年にダイムラー・ベンツに入社したサッコは、フリードリッヒ・ガイガーという老練なドイツ人デザイナーの下に配属され、彼がリーダーを務めるデザインスタジオでカーデザインに対する造詣を深めてゆく。一般に自動車メーカーにおけるデザイン部の構成はチーム制で、リーダーの主宰するスタジオごとに作業が進められることが多い。サッコが就いたガイガーは戦前からベンツに籍を置くデザイナーで、戦前の500K、戦後の300SLクーペ&ロードスターが代表作だといえば、その実力たるや推して知るべしである。

サッコが配属されたガイガーのデザインスタジオには、1年前から同じくガイガーの下で働くことになったもうひとりのデザイナーがいた。彼の名は、ポール・ブラック。フランス生まれのブラックは、すでにベンツの先行デザインに関するチーフの立場で活躍しており、W100=600リムジンを皮切りに、W111/112、113、108、109、114、115という、いわゆるタテ目のベンツをガイガーのサポートの下で次々と完成してゆく。

いわばガイガーの一番弟子として、ベンツのデザインの一時代を築いたブラックは、'67年にベンツを去り、フランス版新幹線、TGVをデザインした後、'70年にBMWへ入社。ミュンヘンオリンピックを記念して製作されたコンセプトカー・BMWターボを手始めに、5シリーズE12、3シリーズE21、そして6シリーズE24、7シリーズE23といったモデルをデザインディレクターの立場で取りまとめていく。逆スラントフェイスにキドニーグリルと丸いヘッドライトのあのBMWフェイスは、タテ目のベンツを描いたのと同じ頭脳と感性の下に完成されたのだ。これらのモデルのデザインコンセプトが、現代の各モデルに至るまで、BMWのスタイリングに強い影響力を残し続けていることは周知の事実である。

ブラックの残した仕事について知った後で、目の前の6シリーズを眺めると、なるほどタテ目のベンツに通じるやわらかい造形が見て取れるような気がする。これはあくまでも個々の主観による感想が最優先されるべきだから、みなさんも各自、それぞれの感想を抱いてみてほしい。

さて、ガイガーの二番弟子としてベンツのデザインスタジオでキャリアを積み重ねてきた我らがサッコはというと、'73年のガイガーの引退を受け、翌年にベンツのデザインスタジオの責任者に就き、その後は前述の通り、GC的ベンツの各モデルを次々と完成させることになるわけだ。

長々とした事実関係を読み切ってくれたことをみなさんに感謝しつつ、ふと、こんなことに気づかないか?という問いかけをしたい。

メルセデス・ベンツとBMW、中でも僕らが大好きで、この先もずっとずっと大切にしてゆきたいと思える世代のドイツ車は、たった2人の才能が、ほぼすべてを描ききっているのではないか、ということだ。

もちろんクルマのデザインは、チームで取り組むべき要素が少なくなく、例えばBMWの5シリーズに関しては、ベルトーネに在籍していた頃のマルチェロ・ガンディーニが副デザイナーとして参画していたという記録があるし、6シリーズにおいてもベルトーネの面々との関わりはあったようだ。けれども、デザイン・コンペティションの舞台へと上がってくる何十、何百の提案を選定し、1枚のスケッチを高みへと極める任を完璧にこなし、僕らが大好きなGC的世代のドイツ車をデザインしたのは、ポール・ブラックとブルーノ・サッコのたった2人のデザイナーなのだ。彼らをカリスマと呼ばずして、他にどう表現すればいいのか。

さらに驚くべき事実がある。我らがカリスマのこの2人は、20世紀カー・オブ・ザ・センチュリーの25台に選ばれた300SLを描いたフリードリッヒ・ガイガーという才能の下に机を並べ、世紀の大師匠の前で戦われるコンペティションを勝ち抜くためのデザインワークに共に切磋琢磨したライバル同士でもあるのだ。

もっと言おう。フリードリッヒ・ガイガーが夢高くダイムラー・ベンツに入社したのは1933年。奇しくもポール・ブラックとブルーノ・サッコともに、同じ1933年にこの世に生を受けている。存在自体に因縁すら感じる独・仏・伊の3人のデザイナーの残した仕事を知るにつけ、つくづく美への感動は、個人の仕業に対する崇拝なのだなと思わずにはいられない。そうは思わないか?



アーティスティックな造形が
許されたネオクラシックな時代

前段で、工業製品におけるデザイナーの憂鬱についてお話しした。残念ながら、BMW6シリーズ・モデルE24を超えたと誰もが認める美しいクーペは、未だに登場していないことも多くのGC読者に同意してもらえると思う。そして、実は同じ師匠の下で修業した、たった2人のカリスマに、心を奪われてしまった我々なのだという事実も判明した。

それでは、なぜ次はないのか。どうして3人目のカリスマは、現れてくれないのか。そもそもクルマにとって、デザインとは何なんだ。

今年上半期の話題を独占した、プリウスとインサイト。GCの読者の中には、ひょっとしたらもう忘れてしまった人もいるかもしれないが、両車のカタチを思いだしてほしい。私の周りの多くの人は、よく似てるよねと言っていた。燃費のために空力性能を追求すると、やっぱり同じようなカタチになるんだねと言っていた。ま、確かに似ていると言われればその通りだが、私はトヨタとホンダのデザイナーは、共によく頑張ったと思っている。つまり、よくぞあそこまで違うカタチに持っていったもんだと思うわけだ。

ハイブリッドシステムの仕組みが違う両車は、乗員数やサイズなど、基本的なコンセプトは酷似していても、スキンの下に包み込む内容物の違いによって、まったく同じカタチにはならない。けれども、それはブラックが6シリーズを描いたときほど自由な造形が許されているということと同義ではない。いちばんの理由は、空力に於ける性能要件が極端に高まってしまったことにある。

クルマに限らず乗り物は、速度が高まるにつれて、急激に空気による影響を受けるようになる。コンサバティブなセダン型の乗用車でも、速度が60km/hに達した時点で、空気抵抗の大きさが全走行抵抗の半分を超えると言われている。もともとアウトバーンでの高速走行が開発の前提にあるドイツ車では、空力抵抗の軽減だけでなく、あらゆる意味での空力性能の向上に寄与するためのデザインアプローチが見られた。目の前のアルピナに装着されたチンスポーラーやリアスポイラーもそうだし、極端なほど分かりやすい例で言えば、ポルシェの巨大なリアウイングなどは、速く安全に走るための理屈に基づいて徹底的に磨き込まれた結果の造形に他ならない。

ところが、世の中は徹底的な高効率、つまり燃費の向上をすべてのクルマに備えさせなければならない時代に突入した。こうなると、4つのタイヤとお約束の機関類、そして乗員と荷物のための空間といった、クルマの構成要素が変わらない限り、カタチは極端に似通ってくる。ボーイング社とエアバス社には何種類もの飛行機が存在するが、丸い胴体と主翼と3枚の尾翼の有り様は、誰にでも見分けが付くほど違ったりしないのと同じことだ。飛行機は、性能的なデザイン要件のほぼすべてが空気そのものだから、あぁいうふうにしかならないのだ。

カーデザイナーの仕事は、大きく変わりつつあるのかもしれない。それは、今回登場した3人のデザイナーたちが、工業デザイナーとしての制約を受けつつも、造形そのもので明らかな個性を表現する余地が大きく残されていたのに対し、もはや世界中の自動車メーカーのコンピュータがはじき出す似たような正解を、それぞれのメーカー製らしく見せるためのリフォームに限定されてしまったのではないかということだ。すべてのエンブレムを外し、窓や灯火類をまっ黒に塗りつぶしてなお、どの角度から見ても車名が一目瞭然で答えられるような個性的な造形を持った新車が、どれだけ存在するのか。

造形に対する感覚は、極めてアーティスティックな要件だから、個人の才能に因るところが大きい。偉大な作曲家がひとりで何曲もの名作を残すように、クルマにおいても同じことだ。カリスマデザイナー、大歓迎。最高のデザインは、組織の合意で生まれるものなんかじゃ、ない。

もちろん、21世紀のカリスマデザイナーが登場してくれることを、心から望んでいることは、みなさんも同じだと思う。我々凡人が思いもつかない手法で、ブラックのような、サッコのような作品を生み出して、僕らを魅了してほしい。けれども、その時が来るまでは、性能要件が穏やかだった分だけ、時代を遡ればのぼるほど、きらめくアーティスティックな才能に触れることができる。ネオクラシックは、だから美しい。



Bruno Sacco
1933.11.12 - 2024.9.19 享年90



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情景が蘇る・情景を遺す、そういう音を。






みにくい「自前サーバーブログ」が続いていますが、もうしばらくご辛抱ください。facebookに寄せられた視聴環境ごとの見え方について、対策を検証しています。


この方のNAロードスターに音楽のある空間を加えさせていただいたのは、ちょうど1年ほど前になります。NAロードスタースピーカーシステムtype2、3Dシステム、BassPLUS+をDSPパワーアンプでセットアップするフルシステムです。

詳しいことは、過去に書いたブログに詳しく書きましたので、そちらをご覧になってください。

『音楽は、心に響くもの。』


一昨日、IYAGarage へ試聴に来てくださった方にも訊ねられたのですが、わたしがスピーカーシステムを通じて創りたいのは、大好きになってもらえる音楽空間で、スピーカーシステムそのものの開発も、音響機材の選定もそれらのセッティングデータの書きあげも、そのために必要な要素を抜かりなく積み上げることに努めているだけだったりします。オーディオ趣味に精通されている方ならよくご存じだと思う「リファレンス」とか「原音再生」とか「高級=高額=良音質」というような事ごとを目指したり推奨するようなことは、考えたこともありません。数字で表せる高性能なものをつくりたいわけではまったくなく、ただただ惚れてもらえるものの正体を追い求めているわけです。

惚れてしまう、すなわち琴線を響かせる要素のひとつに、在りし日の情景を想起させるような感動体験があると思います。

今回、この方が愛車のNAロードスターにご夫婦で収まり、スピーカーシステムの仕上がりを確認していただいたときの様子は、まさにご自身が刻み遺した轍の姿を確認できたことへの感動だったのだと理解しています。かつてDJとしてパフォーマンスを披露していた頃に好んで選曲した楽曲では、客にしっかりと伝えたいキメのフレーズのきらめきを確認し、坂本龍一のピアノが奏でる旋律に彼にしかわからない記憶が甦り、そして奥さまの愛聴曲への興味がふくらみ……そういう様子が収められています。

そのような様子を目の当たりにして、ご当人以上にわたしが感激してうれしくなってしまったのは、オーナー氏は数年前に片耳の聴覚をほぼ完全に失い、大好きだった音楽をむしろ遠ざけるような日々を過ごしていたことを伺っていたからでした。

彼の片耳は音を感知するセンサーとしての機能を失ってしまいましたが、彼の脳に刻まれた音楽の記憶は、それ以外のすべてのセンサーを通じて彼に入力された情報によって大好きなロードスターの車内にくっきりと蘇っているのだと、そのように映りました。思わず両手を拡げて左右の空間の中に浮かぶ音楽をイメージするような姿に、事情を伺っていたわたしには信じられないような光景を見ているような気持ちになりました。


鼻先をキンモクセイの香が撫でるとふと思い出すような何か……のような体験、誰しもにあると思います。それと同じように、記憶の彼方に置いてきたような情景が蘇るような音楽空間を創って、それを必要としている人に届けてみたい。そして欲を言えば、愛車の中で過ごした今日の記憶を何年も先にふと思い出したときに、その情景の一つの色としてわたしが創ったスピーカーシステムから流れる音楽が蘇るようなことがあれば最高じゃないかと、そう思うわけです。







現在、ウェブサイトを全面改修しているため、スピーカーシステムへのリンクが切れています。スピーカーシステムの製作、試聴については、I.Y.A.Garage 岩間くんへご連絡ください。追って、ヤマグチが対応させていただきます。
090-7630-1461


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会社のホームページを変更しました。






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会社のホームページを変更しました。以下にリンクを貼っておきます。

【 k-advanced Inc. 】


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会社といっても社会的な立場として法人を名乗れる最小の規模で、わたしが好きなこと、やりたいことを放り込むただの器のようなものです。なので、いろいろな事ごとについての具体的な表現は、山口宗久 としてこの yamaguchi-munehisa com や facebook等のSNSなどで発信してゆこうと思います。

"yamaguchi speaker system" についての表現も一時期、会社のホームページで展開していたことがあるのですが、もう一度この yamaguchi-munehisa com に戻して、わたしの粘着質なこだわりをみなさんにネチネチと示してゆこうと考えています。

まだ作りかけですが、どうぞ楽しみにしていてください。


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NCスピーカーシステムの話をもう少し。






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昨日のブログ、出掛ける前のドタバタとした時間に慌てて書いたので、後で読み返すとなんだかとても雑でした。
写真の説明が特にひどかったので、そこだけもう少し詳しく書き直します。


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写真は、ドアスピーカーを取り付けるところのものです。5ミリ厚のベースボードの上に、24ミリの土台を組んでそこにエンクロージャーを載せ、その上にスピーカーユニットを組み込んだバッフルボードを取り付けます。

ずいぶん大がかりな構成ですが、イメージする音を実現するために必要な要素を漏れなく実行したらこうなってしまいました。どれも省略できなかったということです。

例えば、取り付け部周辺の、いかにも共振しそうな平らな鉄板を覆いながら既存のスピーカー取り付け穴を塞ぐためには、このくらいの面積のベースボードが必要です。面積がとても広いので、少し厚めの5ミリ厚のCFRPを使いました。とても大きな強度を持つCFRPですが、実はそこそこしなるので、形状や大きさごとに厚さを変える必要があるんです。

ベースボードの妙な格好の外周は、最後に取り付ける樹脂カバーに干渉しない範囲で目一杯広い面積を取った結果です。L字型の切り欠きは、樹脂カバーの脚に干渉しないためのものです。とにかく、スピーカーシステムを取り付ける周辺をしっかりとした強固な土台として仕上げること。これが、基本です。

その上に24ミリ厚の土台を積み上げます。

NCロードスターは、ドア戸袋車内側の鉄板からウインドウレールまでの距離がとても浅く、このような土台がないと、必要な容積のエンクロージャーを実現するための奥行きが取れません。実はBOSE仕様を含めた純正スピーカーは、戸袋のサービスホールを塞ぐ防水用樹脂パネルの凸部のてっぺんにねじ込まれています。ネットで調べると、多くの人もその樹脂パネルの凸部に取り付けボードを介してスピーカーを取り付けているようです。ただ、これではメリハリのある明瞭な音の再生は難しいです。

音の明瞭感を実現するために考えることの例として、「枕の上の目覚まし時計」という話をよくします。柔らかい枕の上で鳴る目覚まし時計の音は、音に変換される前の振動が大量に枕に逃げてしまいます。本来ならば、自分を起こしてくれるはずのエネルギーは、音になる前に枕を震わすために使われてしまうわけです。もし仮に、目覚まし時計をしっかりとして硬質なボードに取り付けたとしても、目覚まし時計の振動はやはりボードを伝って枕に逃げていってしまいます。まくらが極小に見えるほど巨大なボードを用意すれば、また別の話になりますが、あまり現実的ではありません。いずれにせよ、朝きちんと起きたければ、目覚まし時計の置き場所は、枕のようにダンパーの役割をするものの上ではなく、内部損失の少ないしっかりとした土台の上が最適というわけです。

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しっかりと組んだ土台の上に、スピーカーユニットを組み込んだバッフルボードを固定します。


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実は、バッフルボードの外周は円形ではなく、カムのように一部が欠けた形状になっています。これは、BOSEスピーカーサイズに切り抜いた純正樹脂カバーに干渉させないためです。車両を加工・改造しない取り付け性能を実現しながら、同時にスピーカーシステムの取り付け位置をめいっぱい手前に引き出したいという音へこだわるための理想も捨てたくないとふんばると、あっちもこっちもこのような工夫だらけにならざるを得えません。このことは、NCロードスター用に限らず、すべてのスピーカーシステムに共通した特徴です。タッピングビスでドアパネルに穴を開けていいよということならば、イチミリも頭を捻る必要がないところです。


そういえば、IYAGarage 岩間くんから、NCの取り付けひとまず完了ですという写真が何枚か送られてきました。トランクの中は既設のパワーアンプの上に2階建て構造でDSP(アンレス)を搭載してます。いまは剥き出しの配線類を隠せば、もう少し美しく仕上がるでしょう。

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というわけで、今日はあと4時間くらいしたら、IYAGarage に向かいます。まずは、このDSPにPCをつないでセッティングを行います、オープンとクローズを作らなくてはいけないので、お昼頃までは掛かると思います。その後は、オーナー氏が夕方に引き取りに来るまでは試聴していただけます。

車両の仕度の都合があるので、何時ころに行きたいんだけど……的なお電話を事前にいただければ助かります。連絡をいただければ、わたしも帰らずに待っています。
I.Y.A.Garage 岩間くんへご連絡ください。
090-7630-1461
神奈川県足柄上郡開成町延沢602-1

3Dフルシステムを装着したNDロードスターとW124も試聴していただくことが可能です。



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NCスピーカーシステム、幸せになれます。






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NCロードスタースピーカーシステム、シリアル0000番の試作機、オーバーホールが終わって車両に戻す作業をI.Y.A.Garage にお願いしました。

いくつか追加のシステムアップ項目があったので、わたしも機材周りを手伝って、音が出るところまでは作業に付き合いました。午後3時半から始めて、メシも食わずに午後9時頃まで掛かりましたが、音出しのテストも無事終えて帰路に就きました。金曜日、岩間くんが内装の組み付けをきちんと仕上げて、土曜日に引き取りに来るオーナー氏にお返しすることができるでしょう。


NCロードスタースピーカーシステムが、なぜこんなにたいそうな姿になったのか。

土台は絶対に大切なんです。しかも樹脂製の薄い土台の上に、どんなにしっかりした土台を載せても、それは樹脂製の土台の効果止まりなんです……というあたりの話は、長くなるのでまた今度。

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前回のブログでお話ししたとおり、ラウドネスオンで低音高音ぶんぶん、音響エフェクトでさらに極端なイコライザー効果ぶんぶん状態で鳴らし続けた結果、スピーカーユニットが壊れてしまったことが今回の作業の理由です。ということはつまり、また同じ環境にスピーカーシステムを取り付けた場合、またうっかり鳴らし壊してしまう可能性もあります。そこでオーナー氏と相談して、DSPを取り付けてもらうことにしました。

・NCロードスタースピーカーシステム(パッシブネットワーク回路付き)
・NCロードスター サブウーファーキット
・BassPLUS+
・audison SR5.600パワーアンプ(4ch + 1ch)
・古い2DINサイズカーナビ
・【audison bit Ten-D (アンプレスDSP)】
・【audison B-CON(Bluetooth受信機)】

【カッコ】内が今回追加した内容です。


これまで使っていたとても古いカーナビは、RCAラインアウト端子が付いてなく、内蔵パワーアンプを経由した出力をパワーアンプに送り込んでました。前回のブログでも説明したとおり、バッテリー端子を抜くような整備を行うと自動復帰するデフォルト状態が、ラウドネスやサウンドエフェクトがオンの凄まじい音づくりのこのカーナビヘッドユニット。スピーカーの質が良くなくてもそれなりな"感じ"に聞こえさせようという狙いで設計されたのだと思います。つまりストレートに言っちゃうと、音楽なんて聞こえればいいじゃんくらいのオーディオ品質優先度で、CDを掛けてもすごく平坦な感じの音楽しか聞こえてこなかったんです、実は。

オーナー氏は、ヤマスピのことをとても応援してくださる方で、その熱意たるや、ロードスターのイベントでも自発的に試聴会を開催してくださるほどだったりします。そのような日頃のお礼の意味も兼ねて、ガレージで眠っていた bit Ten-D を無償で差しあげることにしたのが、今回のシステムアップのきっかけです。眠っていた機材とはいえ、発売当時は、他に選択肢がないような素晴らしい機材でしたし、かつてわたしのW124で使用していた機材そのものだったりします。

DSPを使うためにデジタル接続が必要になるので、audison B-CONを使用することにしました。今となっては旧型の bit Ten-D は、96kHz/24bit を超えるサンプリングレイトの音源を流し込むとフリーズしてしまうのですが、B-CON のBluetooth受信限界は 96kHz/24bit なので、ちょうどいい具合の関所になります。有線で192kHz/24bit をスルーアウトさせる機能も備わっているのですが、今回はその端子は使いませんから。


で、昨日のうちに音が出るところまで組み上げての感想は、やっとホンモノのNCロードスタースピーカーシステムの音に出逢えた、というものだったりします。DSPはまだクロスオーバーネットワークを簡単に割り当てただけ……つまり、SR5.600にも同じくらいのことができるネットワーク調整機能は付いていますから、SR5.600を素で鳴らしているのと同じです。それなのに、こんなに澄んだ音が聞こえてくるなんて。

音源のクオリティの重要性とそこまで神経質にこだわらなくてもいいよ提案については、またこんどゆっくり書きたいと思いますが、今回ばかりはかなり驚きの結果となりました。

土曜日の朝、組み上がったNCロードスターが待っているI.Y.A.Garageに行って、DSPのセッティングを行い、仕上げます。午後には完成していると思うので、ぜひ聴きに来てください。デモカーの用意がないモデルなので、いつかまた今度は、ご縁がなかったということで、というのとほぼ同意かと思います。わたしも夕方までおりますから、いろいろなご質問に直接お答えできます。ぜひ、に。

瞬間芸みたいなiPhone撮影動画ですが、NCロードスタースピーカーシステムの素の音です。




車両の仕度の都合があるので、何時ころに行きたいんだけど……的なお電話を事前にいただければ助かります。
I.Y.A.Garage 岩間くんへご連絡ください。
090-7630-1461
神奈川県足柄上郡開成町延沢602-1

当日は、3Dフルシステムを装着したNDロードスターと、W124も試聴していただくことが可能です。



※ぜひ、Facebookでわたしをフォローしてください。ブログよりも更新が楽なので、スピーカーシステムの話、クルマの話、はるかにたくさんの発信をしています。簡単な動画ですが、スピーカーシステムの音を車内で録音したファイルも、Facebook内にはたくさんあります。鑑賞だけならアカウントは不要です。下のFacebookのURLから飛べます。

facebook / Yamaguchi Munehisa
Twitter / nineover

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今週末、NCロードスター試聴できます。






みにくい「自前サーバーブログ」が続いていますが、もうしばらくご辛抱ください。facebookに寄せられた視聴環境ごとの見え方について、対策を検証しています。

NCロードスタースピーカーシステムの試作機をオーバーホールしています。試作にご協力いただいたオーナー氏のナビゲーションヘッドユニット、ラウドネスなど賑やかなエフェクトがオンの状態がデフォルトのようで、バッテリーを外すような整備を行うと低音高音が思いっきりブーストされた音質調整に戻ってしまいます。どうやらうっかりそのままの状態で使用されていたようで、鳴らし壊してしまった感じです。

取り外したNCロードスタースピーカーシステムの試作機、シリアル0000番です。test 2021.5.29 とあります。3年半、お疲れ様でした。

2024_0911_01


試作機なので、製品版と少し形状が異なるのですが、基本は同じです。いろいろと書き込みがあって試作機っぽさ満点ですが、何かを気取って書いているわけではなく、世の中にコレ1つしかない……みたいな段階では、実機に書き込みをしておかないと、部品同士の位置関係や製品版への変更箇所などがわからなくなってしまうからなんです。

2024_0911_02


いま改めて眺めてみると、よくこんなものを作ったと思います。ドア戸袋の大穴をふさぐための大きなベースボードは5ミリ厚。NCロードスターのスピーカー取り付けの様子をみていると、樹脂製の戸袋穴塞ぎのパーツの上にベースボードを固定して、そこにスピーカーユニットをねじ留めしている方が多いようですが、あれではダメです。グラグラの木組みの足場の上に建てた城のようで、スピーカーボードがしっかりしていればしているほど、スピーカーから発せられた音振動はグラグラの足場に伝わって薄まってしまいます。しっかり感が期待できない樹脂製パーツに取り付けるのであれば、むしろどれだけフローティングさせられるかという発想の方がおもしろい結果につながるような気がします。やったことないですけど。

NCロードスターの場合、鉄製の戸袋に空いている穴が大きすぎて、これをベコベコしないようにしっかり塞ぐには、CFRPを使っても5ミリくらいの厚みが必要だと理解してください。

その上に、24ミリ高の丸い土台を作って、その上にエンクロージャーを載せ、その上からスピーカーユニットを固定したバッフルボードを重ねます。どの部品もけっこう大きいです、加工を含めた原価、とんでもない金額になりました。こういうふうにしないとダメだとわかっていたので、NCロードスター用のスピーカーシステムはロードスターの中でいちばん後回しになりました。いったいどれだけコストが掛かるのよ、という大問題が起こることがわかっていたので。

2024_0911_03



まあ、そんなこんなの経緯はありましたが創ってしまったというわけで、今回、スピーカーシステムのオーバーホールを機に、むかし使っていたDSP=
audison bit Ten-D という機材を使って、既設のSR5.600パワーアンプを駆動するシステムを組みます。パワーアンプのチャンネル数の関係で、ツィーターとメインスピーカーを1チャンネルとしてカウントする(クロスオーバーネットワークはスピーカーシステム付属のパッシブ回路です)簡易DSPセットアップですが、ラウドネスがぶんぶん鳴るシステムからバイバイできます。

NCロードスタースピーカーシステム
NCロードスターサブウーファー
BassPLUS+
audison vit Ten-D
audison SR5.600 パワーアンプ

今週の土曜日の午後、I.Y.A.Garage に来ていただければ、NCロードスタースピーカーシステム、試聴していただけます。車両の仕度の都合があるので、何時ころに行きたいんだけど……的なお電話を事前にいただければ助かります。

I.Y.A.Garage 岩間くんへご連絡ください。
090-7630-1461


当日は、3Dフルシステムを装着したNDロードスターと、W124も試聴していただくことが可能です。



オーバーホール中のNCスピーカーシステムは、メインユニットを新調して、
2024_0911_04


いま、こんな状態です。試作中に必要だった書き込みも消して、きれいに掃除しました。
2024_0911_05




そうそう、そういえば、ポルシェ空冷911用スピーカーシステムの部品が届きはじめました。これはエンクロージャーです。取り付けちゃえば見えなくなる部分がいちばん変な格好です。はい、意味あるカタチだとご理解いただいて正解です。これから1つひとつ、わたしが手仕事で仕上げてゆきます。

2024_0911_06



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JBL BASSPRO HUB のこと。






みにくい「自前サーバーブログ」が続いていますが、もうしばらくご辛抱ください。facebookに寄せられた視聴環境ごとの見え方について、対策を検証しています。

ガレージでJBL BUSPRO HUB というサブウーファーを分解しました。A124(W124カブリオレ)にスピーカーシステムのフルシステムを組ませていただいたときに使用したものですが、故障してしまって取り外したものです。残念ながら保証書が見当たらないということで、新品をもういちどお買い上げいただくことになってしまったのですが、取り外した故障品はいつか復活させてやろうと思い取り置きしていたのでした。


2024_0910_02-1




取り付けてDSPセットアップをする前、元気に鳴っていたときの動画です。もう4年も前なんですね。


今回、少しくらい修理に手間とコストが掛かってもいいから直してみようと思い、分解しました。PRT(プロテクション)という赤いLEDが点灯して、反応しなくなるという症状。ウェブで公開されている英語版の説明書によると、この赤いLEDは、回路のショート、電源電圧の過不足等の異常を検知したときに点灯するとのこと。使用開始後1年も経っていない機材なのでコンデンサーのパンクということはないでしょう、と。ハーネスの短絡か電子基板のはんだ付け不良か、ひょっとしたらはんだくずのような通電性のゴミでも転がっているか、そんな感じじゃないのかなと、楽観的にイメージしながら分解したのでした。

結論から言うと、目視で確認できるような不具合箇所はなく、これは余計なことを考えずに捨てることにしました。電解コンデンサー内部のショートとか、スピーカーユニットのコイルが擦れて短絡しているとか、パワートランジスターがパンクしたとか、いろいろ考えられるんですけど、テキトーなことをして、仮に音が出るようになったとしても火が出たりするとタイヘンなことになりますから。


2024_0910_02-2


それにしてもJBL BASSPRO HUB、これがたった5万円で買えたんですね、という内容です。密閉型の2分割式エンクロージャーと、スピーカーユニットを保護するためのカバーは、すべてアルミダイキャスト製です。11インチ=28センチ径のスピーカーユニットは、スペアホイールに取り付けるボルトが貫通できるよう、ドーナツ型の特殊な形状です。つまり、他の機材と共有の使い回し品ではなく、完全にこの機材のために作らたユニットということです。エンクロージャーの中に収まるパワーアンプの回路も、汎用のチップセットが載っかったものではなく、この機材のためのオリジナル回路だと思われます。電源部にも音声部にも大きなコイルを組み込み、大きな容量の電解コンデンサーをドカドカと……プリント基板のパターンをチェックしていませんが、並列につないで大容量のキャパシターとして電源系で使ってるのでしょう。もちろん半導体は、汎用のものを使っているのでしょうから、完全オリジナルではなく、アレンジメント回路ということだと思いますが、それでも十分に立派です。


2024_0910_02-3


1980年代〜1990年代中ごろの日本製オーディオ機材は、半導体まで独自設計の専用品がたくさん使われていましたが、今となってはAliExpressとかで1枚300円くらいで売られているような汎用のチップセットをアルミ筐体に入れてるだけの製品だったりします。数年前、アルパインとカロッツェリアのパワーアンプの中身が、電子基板のプリントパターンまでほぼ同じ……2万円程度の安い製品ではありましたが、そういう日本製になってしまったことをこの目で確認しちゃってからは、大きな看板で商売する作っている人の顔が見えない日本製オーディオ製品への期待も信頼も消滅してしまいました。創意に溢れていたあの頃から半世紀近く経ってるわけですから、という片づけ方ではよくないような気がしますが、変わってしまったという事実は受け止めておくべきでしょう。

JBL BASSPRO HUB、JBLのカーオーディオ部門が日本市場を撤退したことで手に入りにくくなり、それからいくらも経たないうちに、製品自体が廃番になってしまい完全に入手不可能になってしまいました。その後、確か1年くらいして、フランスのBLAMという会社から、まったく同じ筐体を使った製品が登場したのは奇跡のようにラッキーな出来事でした。今やハーマン/カードン、AKG、マークレビンソンと並んで韓国サムスングループの巨大な傘の下に入った名門ブランド"JBL"と、ホームページに会社のメンバーが写真付きで紹介されているような2013年創業の若くて小さな会社"BLAM"の間にどういうやり取りがあったのか知る由もありませんが、とにかくよかったよかった、ということです。JBL時代の2倍近い9万円という価格は、企業規模からイメージできる販売数を考えると妥当でしょう。


というわけで、残念ながら復活を目論んでいたJBL BASSPRO HUBは、燃えないゴミの日を待つことになりました。


そういえばちっとも関係ない話ですが、audison B-CON が2セット届きました。1台は週末までにマツダ・NCロードスターに、もう1つは今月中にポルシェ911/993に装着する予定です。

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山本修弘さんのことを書きました。






みにくい「自前サーバーブログ」が続いていますが、もうしばらくご辛抱ください。facebookに寄せられた視聴環境ごとの見え方について、対策を検証しています。

さて、
9月27日発売のカーセンサーエッジ誌、連載「クルマの達人」で、NDロードスター開発主査を務められた山本修弘さんのことを書かせていただきました。
具体的なクルマの話……例えばサスペンションとかエンジンとかデザインとか、そういう話は、ほとんど書きませんでした。ただただ山本さんの目の前に現れた情景とそれについてのご本人の反応を書きました。その中から、我ら凡人の身の丈からでも見渡せる決してスーパーマンではない親しみと、おおよそほとんどの人には真似できない人並み外れた特性を読み抜いていただければうれしく思います。NDロードスターが、いまよりもっと愛おしくなるなるかもしれません。

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写真:上出優之利




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ブログ移行、動画貼り付けのテストです。






おはようございます。
少し掛かりっきりのデスクワークがあって、間が空いてしまいましたが、ブログのテストを再開します。

1回目のテストブログについて、それぞれの視聴環境での見え方についてfacebookにコメントをくださった皆さん、ありがとうございました。

少し手を加えたのですが、改善されましたでしょうか。


今回は、動画のアップについてテストします。



1)まず、facebookにアップ済みの動画へのリンク貼り付けです。




2)
2つめは、YOUTUBEからの貼り付けです。幅=560サイズでのリンクですが、どんな感じでしょうか。




3)
3つめは、ブログ作成ウインドウに直接貼り込んでみましたがなんだか反映されていないっぽいです。とりあえすアップしてみます。




さて、皆さんの視聴環境ではどんな感じに見えていますか。お時間がある方はfacebookのコメント欄で教えてください。


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911でフルオーケストラ






昨日(このブログを書き始めたのは、
まだかろうじて23日だったりします)、
今週末の試聴会のプレイリストを紹介
しました。


2024.07.27,28
【PORSCHE911 試聴会プレイリスト】


クラシック音楽の楽曲がありませんで
したね。

911でも用意したDSPのフルオーケ
ストラセッティングでは、ズービン・
メータ指揮ロサンゼルス・フィルハー
モニックが演奏する、ホルスト・組曲
惑星の木星を用意します。



1971年の録音ですが、数ある“惑星”
の演奏の中でも、随一の壮大さがある
わたしのお気に入りの音源です。

実は、amazon music にはラインナッ
プされていないようなので、わたしが
持っているハイレゾ音源をスマホに入
れておきます。

YOUTUBEで見つけたので、リンクを
貼っておきます。こんな演奏です。

【ホルスト組曲惑星/木星】
ズービン・メータ ロサンゼルス・フ
ィルハーモニックオーケストラ


それにしても、良質なアナログ録音素
材からデジタルにリマスタリングされ
た音源には、びっくりするくらいよい
ものが多いです。対して、データ密度
が粗だった頃の古いデジタル録音によ
る音源は、最新の技術で何をやっても
あまり蘇る感じがしません。アナログ
っていうのは、デジタルで言うと、帯
域は狭いけれども密度は目一杯濃い記
録ですものね。

DSPの本来の目的をまるで無視した
セッティングですが、聞いてくれた人
がこぞって驚いてくれるアイデア勝負
のセッティングです。

どうぞ楽しみにしていてください。

********************

【試聴会詳細リンク】

ポルシェ空冷911 完成記念試聴会、
関東の回に続いて、愛知県の日進市で
開催します。

開催概要は以下の通りです。

【中部試聴会】
7月27日(土)   10:30〜18:00 
7月28日(日)   10:30〜18:00 


《 Queen’s Classics 》
愛知県日進市香久山1-101

※今試聴会は、山口宗久の主催で行い
ます。会場をご提供いただくファクト
リーへの今件についての直接のお問い
合わせは、ご遠慮ください。

ご来場の方々が同時間帯に集中し、長
時お待たせすることを避けるために、
ご試聴枠の予約を受け付けています。

以下のサイトから、ご予約ください。

【PORSCHE 911
 スピーカーシステム試聴会・予約】


※途中、入会を促すメッセージが出ま
すが、「RESERVA会員以外の方」という
方からお進みください。

※ご予約なしでもご来場いただけますが、
お待ちいただく可能性がございます。


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PORSCHE911試聴会プレイリスト、公開






いよいよ今週末に迫った「ポルシェ空
冷911 完成記念試聴会」で使用する楽
曲のプレイリストを紹介します。


1「三日月」絢香
2「哀しみを、そのまゝ」小田和正
3「I LOVE…」Official髭男dism
4「Hotel California」Eagles
5「bad guy」Billie Eilish
6「優しさ」藤井 風
7「Domino Line」CASIOPEA
8「KOLN,JANUARY
        24,1975 PART I」
          Keith Jarrett
9「青い珊瑚礁」松田聖子
10「そして僕は途方に暮れる」
         大沢誉志幸
11「悲しい色やね
    〜Osaka Bay Blues〜」
    上田正樹&押尾コータロー
12「Parisienne Walkways(Live)」
           Gary Moore




2024.07.27,28
【PORSCHE911 試聴会プレイリスト】



IMG_5058

語り始めるとやたらと長くなるので、
まずはリンクからプレイリストの各曲
を聴いてみてください。

スピーカーシステムの作り手的には、
それぞれの曲に新しく完成した911ス
ピーカーシステムのポテンシャルを試
すための“聞きどころ”があるのです
が、それは試聴会場でお会いしたとき
にご希望であれば訊ねてください。

今回の変わりどころをひとつだけ言う
のであれば「青い珊瑚礁」と「そして
僕は途方に暮れる」そして、
「Parisienne Walkways(Live)」でしょ
うか。

どちらも比較的旧い録音の楽曲です。
「青い珊瑚礁」は日本の歌謡曲的な音
作りの代表のような音源ですし、1984
年発表の「そして僕は途方に暮れる」
はバブル全盛のいわゆるシティポップ
の代表曲、「Parisienne Walkways(Live)」
はとても荒削りな……語弊を恐れずに
言えば少し雑に感じられるくらいライ
ブの現場で録ったままの音を封じ込め
たアルバムからの音源です。

オーディオ装置は、高品位になればな
るほど、音源の録音や制作の良し悪し
が丸見えになってしまう傾向がありま
す。けれどもわたしは、オーディオ装
置を使って音観察をしたい人の気持ち
より、音楽を聴きたい人の気持ちを大
切にした音楽環境づくりをしたいと思
っています。

ロードスターでもあの頃系メルセデス
も、その気持を忘れたことはありませ
んし、新しいポルシェ用でもその想い
は変わりません。

学生の頃みんなでよく歌ったんだよな
とか、部屋にこもって浸っていたんだ
よなという時代の音楽を、大好きなク
ルマの中で新たな愛聴盤として再び取
り戻してほしい。そういう世代への楽
しみの提案として、採り上げました。

このプレイリストをスマートフォンに
ダウンロードして、ご自身の愛車で聴
きながら試聴会にお越しいただければ、
さらにいろいろな感想を持っていただ
くことができるのではないかと思いま
す。


ぜひ、お一人ずつゆっくりと時間を取
って、このプレイリストの楽曲を楽し
んでいただければと思っています。

下記のリンクから予約をしていただけ
れば、優先的に試聴していただけるよ
うに配慮いたします。


試聴会の概要は以下の通りです。どう
ぞお越しください。楽しみにお待ちし
ています。

*******************
ポルシェ空冷911 完成記念試聴会、
関東の回に続いて、愛知県の日進市で
開催します。

開催概要は以下の通りです。

【中部試聴会】
7月27日(土)   10:30〜18:00 
7月28日(日)   10:30〜18:00 


《 Queen’s Classics 》
愛知県日進市香久山1-101

※今試聴会は、山口宗久の主催で行い
ます。会場をご提供いただくファクト
リーへの今件についての直接のお問い
合わせは、ご遠慮ください。

ご来場の方々が同時間帯に集中し、長
時お待たせすることを避けるために、
ご試聴枠の予約を受け付けています。

以下のサイトから、ご予約ください。

【PORSCHE 911
 スピーカーシステム試聴会・予約】


※途中、入会を促すメッセージが出ま
すが、「RESERVA会員以外の方」という
方からお進みください。

※ご予約なしでもご来場いただけますが、
お待ちいただく可能性がございます。

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