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大好きなクルマと大好きな音楽と。

パワーアンプを車内のどこに置くべきか。






今はたった1つだけになった雑誌の連載、歳を重ねるごとに産みの苦しみが大きくなってきてます。以前に比べると圧倒的に書きの量が減ったことが原因なのか、単に脳が寝ぼけてきているのか。いずれにしても、何時間Macの前に座っていても一歩も進まないようなときは、いったん別のことに集中するしかない性分は昔から変わりません。

ギターを弾いたり本を読んだり……もできない気分のときは、溜まっている別の仕事に掛かります。例えば、ヤマスピ関係のこと。複数の別作業が団子になっていて、こっちはこっちでアタマがこんがらがりそうですが、10月末〜11月中にI.Y.A.Garage で取り付け&セットアップを依頼するクルマ用のパワーアンプボードを仕上げることにしましょう。。。。

で、3つ仕上がりました。

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左上は、現在BassPLUS+までのDSPセットアップで楽しんでいただいているNDロードスターオーナー氏が、2024年モデルND-RFに乗り換えるということで、この機に3Dシステムを実現しましょうという提案を実現するためのアンプボードです。この方はすでにSR4.500というパワーアンプに、AP4.9bitというDSPパワーアンプを加えたシステムを組まれていてですね、とても気に入っているSR4.500で鳴らすメインスピーカーの音を残したいとのこと。確かに、audison製のSRシリーズというパワーアンプは、ぐいぐいととても力強い音傾向があって、これは力強さと繊細さを兼ね備える傾向のAP FやAFシリーズとはまた違う趣がいい感じなんです。ロックやブルース、ソウル、ゴリゴリ系のジャズの熱い要素に痺れちゃう人には、この深イイ感じの鳴り気配、ほんとうにお勧めです。アメリカ製だった頃のロックフォードのアンプと同傾向、ギターならストラトキャスターではなくレスポールのフロントみたいな……わかりませんね。ともかく、3D化のために必要な9チャンネル分を確保するために開発車から外したJBLパワーアンプを追加したシステムで組むことにしました。

上記とおなじロードスターのための右となりのアンプボードは、AP 4.9bitというDSPパワーアンプをトランク右側の内装材の裏に取り付けるためのものです。NDロードスターのRF(ハードトップ)モデルでは、車内シート後方中央の小物入れが車両の構造上パワーアンプ収納のために使えません。現在お乗りの幌車では小物入れ内に設置してあったのですが、新しいクルマではトランク右側に引っ越ししてもらうことになりました。

その下は、これも2024年モデルのND-RFに装着するためのアンプボードです。AF M8.14bit、AF M1Dを使ったNDロードスター用の3Dシステムは、現時点でわたしが実現できる最高峰のNDロードスターのための音楽環境です。

右となりの小さなボードは、B-CONというハイレゾBluetoothの受信機です。LDACという規格を備えたBluetoothガジェットからの電波を受信して、光デジタル出力します。光出力にはTosLinkという規格の端子が使われるのですが、これがとても弱々しくて不安定な端子なんです。東芝が1983年に開発した規格ですが、家庭用としての規格で、車載される可能性などイチミリも想定してなかったんでしょうね。


で、実はここからが本題です。相変わらずの長大枕でごめんなさい。


カーオーディオのパワーアンプ、どのような取り付け方がベストなのでしょうか。

わたしは、5つのことをテーマとして自分に課しています。

A)車両に加工・改造を施さないこと。
B)車両の機能をできるだけ残すこと。
C)車両の純正デザインをできるだけ崩さないこと。
D)交通事故という万が一に徹底的に配慮しておくこと。
E)格好がいいこと。

A)は、yamaguchi speaker system 全体を通じてのテーマです。豊かな音楽環境を実現することは多くの人にとっての夢であり、わたしにとっての目標でもあります。けれどもそのために、大切な愛車に加工や改造を加えるようなことは絶対に避けるべきだとも思っています。すでに何十年も生き残ってきた貴重な車体はもちろん、今は新車でも長く乗り続けるつもりがあるなら、悪いことは言いません、切った貼ったの改造は避けるべきです。元には戻らない傷痕を前に残念な思いをするときがきっと来ます。もし売却することになったとしても、加工や改造の痕跡は100%マイナス査定です。オーディオに限らず、どんなに高性能・高価格な装備品によるカスタムであっても、車体自体は無加工・改造であることがプラス評価の最低条件です。

B)例えばワゴンやバンのラゲージスペースを占有してレイアウトされたアンプ群や、トランクを開けると荷物の代わりに鎮座しているサブウーファーボックスを、わたしは好みません。クルマには、人や荷物が移動するというそもそもの目的があります。純正オーディオやカーナビ、ハンズフリーフォンなどの機能にも、快適なドライブのための工夫が盛り込まれています。そのような、もともと車両に備わる機能をできるだけ純正のまま残すこと。言い換えれば、スピーカーシステムをインストールすることによって消滅してしまう、そのクルマならではの機能・性能を可能な限り少なくすることをとても重視しています。例えばあの頃系メルセデスでは、セダンでもワゴンでもラゲージスペースをほぼ100%確保したままの取り付け方法を実現しています。マツダ・ロードスターやポルシェ空冷911でも同様です。NDロードスターでは、DSPフルシステムを組んだ場合でも、マツコネに備わる機能は完全に使えますし、例えばシートをフルバケットタイプに変更した場合でも、後付け感満載のスピーカー移設を行うことなく、ナビの音声案内やハンズフリーを可能にする方法を実現しています。

C)自動車メーカーのエンジニアやデザイナーと膝を付き合わせてじっくり話す機会が常套の仕事を長くしてきたことは、わたしの自動車に対する考え方にとても大きく影響しています。例えばデザイン。そのクルマを買ってくださったお客様が四六時中目にすることになるインテリア、中でもダッシュボードと呼ばれる前方に拡がった空間のデザインは、ほとんどの場合まったく手抜かりなく、担当するデザイナーたちの100%の力で造形されています。ヘッドライトを正面に見据えて眺めたときの外観の表情に勝るとも劣らない、ここがデザイナーの腕と感性の見せ所だったりするわけです。そして、その両サイドに腕を拡げたようにインテリア全体のデザインがつながってゆきます。ツィーターもメインスピーカーも、純正ままの内装材の向こう側に隠れるように取り付けられるように設計するのは、自動車メーカーのデザイナーと、デザイナー発の造形の実現を可能にしたエンジニアへの、わたしなりのリスペクトの証だったりします。言うまでもなくオーナー氏がそのクルマを選んだのは、わたしの作る音楽空間の遙か以上に、そのクルマが気に入ったからに他ならないからですものね。そう、パワーアンプの話でした。もちろんパワーアンプボードも、リアトレイの上に置いたり、ラッゲージルームの印象が変わってしまうほど存在を主張させたりしません。

D)クルマは100km/h以上の高速で、人を乗せて、進路を約束された軌道上ではないフリースペースを、自らもそうであるように様々な事情や状況や都合の下に繰り出してくる不特定多数の未知の人たちと混在した状態で移動する乗り物です。つまり、不可避の交通事故が発生する可能性を否定することはできません。そのときに、わたしが車両に取り付けたものが、それを選んでくれた方やその方の大切な人たちを傷つけるようなことは絶対にあってはならないと考えています。これも、自動車ジャーナリストとして自動車を研究するエンジニアたちとの交流が与えてくれた知見ですが、いわゆる衝突を伴う交通事故の発生時、車内はとんでもない事態に陥ります。荷物の類はもちろん、しっかりと固定されていないあらゆるものが勢いよく飛び回ります。例えば50km/hで衝突事故を起こした場合、近年の車体は衝突の加速度を直接乗員に与えないように、グシュグシュと潰れながら衝突エネルギーを時間で分散させる手法で命を守ります。けれども車内に無造作に置かれたものたちは、衝突した速度で射出されて、もはや空中に飛んでしまったそれらの勢いを抑制する理屈などなく、何かにぶつかったときに急激にゼロkm/hの速度まで減速します。もし乗員の顔面に2kgほどあるパワーアンプ、つまり金属の塊が50km/hで衝突したら……。あるいはシートの下に簡単に設置されたパワーアンプが、何かの衝撃で前方に滑り出してペダル類の操作を妨げるようなことになったら……。そういう不幸の原因になりたくない気持ちがあることは、自動車用品を設計する人に絶対に求められる条件だと思います。わたしが作るパワーアンプボードは、ただの取り付け板ではありません。すべて、ボルトを使ってしっかり車体に固定される仕組みになっています。マジックテープで貼り付けるみたいなことでいいわけ、ないだろうと、わたしは考えます。そして、それらを車両への加工・改造ゼロで実現する方法を見つけるのが、わたしの小さなやりがいだったりします。

E)まあ、見た目の格好がいいか悪いかは、つまり好みか好みでないかということで、各人の嗜好の違いによるところが大きいという意味では、なんという稚拙な課題だとも思うわけです。なのでこの項は、上記A〜E)までを実現するために与えられた条件、制約の中で、ヤマグチ的にそう感じられる精一杯の努力義務的なヤツだと思ってください。それでも、手に入れようと感じる憧れや、手にしたときのトキメキ、自分のものとして日々を共に過ごす満足感優越感達成感、とか、そういう事ごとを高めるための要素として、格好いい! ことは、とてもとても大切だと思うわけです。この項に関しては、まあそれだけです……w


上記の要素を満たすために、例えばNDロードスターでは、下の4つの取り付け方法を用意して、複数台のパワーアンプを使用する場合は、オーナーのクルマの使い方に合わせた組み合わせで対応するようにしています。

1)NDロードスターのパワーアンプ取り付け場所として、最初に設定したのがシート後方中央の小物入れです。〜2023年モデルCD/DVDプレイヤー有、〜2023年モデルCD/DVDプレイヤー無、2024年モデル〜、の3種類ボード形状があります。ND-RFモデルでは、この場所を選択することができません。
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2)は(1)の次に設定したのがトランク左奥壁面です。SR5.600、SR4.500の外寸が大きなパワーアンプは、この位置への取り付けが標準となります。この場所の裏側には、給油口から燃料タンクへつながるホースやパイプ類があります。万が一、トランクスペースが全壊するような追突事故に遭った際にもそれらを傷つけることがないよう、アンプボード背面に突き出すねじの高さや形状などに細心の注意を払ったデザインとしています。もちろんAP、AP F、AF M/C といったわたしが使用しているすべてのパワーアンプは、この場所に設置することができます。

3)は、2台目のパワーアンプを設置するために(2)の次に設定しました。SR5.600、SR4.500 以外のすべてのパワーアンプに対応できます。
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4)内装材の裏側に見つけたわずかな空間を利用したこの設置位置は、内装材を組み戻すとパワーアンプの存在を完全に隠すことができます。すなわち、トランク容量を完全に100%確保したままの取り付けが可能になります。ヤマスピを愛用してくださっているマツダ元副社長・藤原清志氏のNDロードスターには、(1)と(2)の組み合わせの3Dシステムをセットアップさせていただいたのですが、後日「機内持ち込み用スーツケースx2個の積載が可能」という開発コンセプトがキープできなかったのは残念だ、というコメントをいただきまして。わわわ、そういえばそのコンセプトを自分も知っていたはずなのに、自分で設定した(B)のコンセプトを守れていないじゃないか!とかなり焦って編み出した取り付け方法だったりします。AP、AF Cシリーズは木製のボード、AP F、AF MシリーズはCFRP製のボードとなります。大型のアンプを搭載するCFRPボードの裏面には、バンパーカバーの裏側に隠れている車体既存の空気抜き口の辺りと重なる位置にアルミ製の放熱フィンを取り付けています。(1)が使える幌車であれば、(1)と(4)の取り付け位置を組み合わせることで、いちばん下の写真のようにトランクスペースを100%確保したまま、ハイパワー仕様の3Dシステムを完成させることができます。つまり、2人分のスーツケースをトランクに収めてヤマスピが提案できうる最高峰の音楽空間で2人の気分を盛り上げながら空港に向かうことができる、というわけです。

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そうそう、ご紹介したこれらの方法すべて、もちろん内装材の切れ込みひとつもなく、車両無加工・無改造で実現しています。いつでも、完全に純正の状態に戻せます。実はその実現がなにより難しいことだったり、します。



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