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大好きなクルマと大好きな音楽と。

写真展

大阪の催【上出優之利 写真個展「クルマの達人」】

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雑誌連載「クルマの達人」の写真を撮っていただいている上出優之利さんの写真個展『クルマの達人』、盛況のうちに終了した東京の催に続き、いよいよ上出さんの故郷である大阪に会場を移し、本日(9月2日・火)より開催されています。

北区・中之島の《キヤノンギャラリー大阪》への道順等は、以下の キヤノン公式ウェブサイトをご覧ください。

【キヤノン 公式ウェブサイト】

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また初日の午後4時から1時間、上出さんによるギャラリートークが開催されます。「クルマの達人」という四半世紀を超える長期連載の表現者のひとりとして、どのように撮影の現場に立つのか、千差万別の表情をみせる被写体に向き合うのか、シャッターを切るのか。質疑応答の時間もあるので、皆さんの質問に対するスリリングな回答が聞けることと思います。わたしもマイクを持って袖に控えることになっていますので、会場で皆さんにお目にかかれることを楽しみにしております。


ところで、ギャラリーに展示される上出さんの写真は、すべて売り物であったりもします。実際、先日の東京の催でも購入された方がいらっしゃいます。A2サイズ個展展示現品で10万円を少し切る価格は、写真家の作品としては新進気鋭の作家に対する評価額として適正価格のようです。

作家と作品と評価とお金について、ふと思ったことを書いてみたいと思います。



昔、どうしても音楽関係の仕事がしたくて、そんなもので飯が食えるかみたいな半喧嘩のような父子のやり取りが大学を卒業する頃のわたしにもありました。どこの家庭にでもあるような光景だと思います。

そのとき父は、「コンサート会場に詰めかける何万もの人たちは全員音楽が大好きで、けれども大好きな音楽を提供する側はステージの上にいる数人ぽっちで、つまりその日会場に足を運んでお金を稼いで帰ってこられる人の割合は、一万分の1くらいだ。レコードを売って稼ぐなんてもっと低い割合だと思う。さてあなたは、数万人の先っちょの一人になれる自信があるか? あるいはそういう人たちを蹴落としてでも目立って認められたいというほどある意味がめつくなれるか?」と言いました。

軟弱なわたしはすぐにビビってギターを置いてしまったわけですが、作品づくりのための便利な道具が充実して、インターネットが普及して作品を世界に流通させる仕組みを安価で利用できる、そんな今の時代でも、創作して換金して生活を成り立たせてさらに次の一手のための糧を得るという一連の行為を連続させて生きてゆくことは、煎じ詰めればかつて父がわたしに言ったことと何一つ変わっていないと思います。

わたしより2歳年上の上出さんはもともとミュージシャン志望で、そのこと自体は我々の世代の男子の半数くらいは考えていたような青年の代表的夢想のようなことなのですが、実際に音楽を金にするための方法を模索するために上京して、バンド活動ではらちが明かないと悟ると実際に音楽制作の側に挑戦して、実際にクラブDJとしての活動も始め、実際に中森明菜の楽曲制作のような大きな仕事に携わることも経験して、2011年の東北大震災の非情を目にしたときに写真で遺す人になることを決意して実際にカメラを手にして、実際に撮影のために街に飛び出し、実際に作品集を自費で編纂(へんさん)して出版して、実際にフランスの展示会で作品を披露しキヤノンの公式ギャラリーで個展を開き、今や実際に写真を撮ることを生業とし、昨日も実際に連載「クルマの達人」の取材に同行して撮影を行い、来月も彼の写真は“上出優之利”のクレジットと共に実際に有料媒体に掲載され全国に流布されるわけです。

この“実際に”を実現するためのあれこれ……行動や発想や切り替えや思い切りや思い込みや勢いやあれこれ、おおよそ多くの人には躊躇されるような選択を、そのたびにしてきて“実際に”実現してきて今があるその作品があるという歴史が、欠かすことのできない作品の価値なのではないかと思うわけです。

写真の道へ進むと決めたとき、彼は音楽の道へ後戻りできないように所有する音楽機材をすべて手放し、ひとまず一銭にもならない作品づくりのために自分の時間の大半を注ぎ、まったく白紙だった写真に関わる人脈づくりのために足を棒にして人に頭を下げ、おそらくは生活のために苦虫を噛み潰すような思いも積み重ねつつ、ようやくの15年目に到達する今日を過ごしているということだと、想像します。

そのような経緯を経て目の前に存在する“写真”という作品を買うという行為は、単に欲しいものを手に入れるという消費行動ではないと思うんです。もちろん自宅の玄関に飾りたいとか、お気に入りのひとつとしてコレクションしたいとかいう目的があるかもしれませんが、その行為は上出優之利という生き方へのリスペクトであり、支払った金額の価値があることを買い手が証明しました、という動かぬ証拠を刻みアーティストを創ってゆくという文化的な行為だと思うのです。

もちろんそれは、余暇を使って趣味でサクッと撮った写真に価値がないということではまったくなく、そういう写真のほうが美術として素晴らしいとかそうでないとかいう意味でもありませんが、上出優之利という写真家がその1枚をそこに創造するに至った物語に与えられたのと同じ評価を得ることは難しいだろうと安易に想像できるわけです。

東京・銀座でのギャラリートークには、50人ほどの老若男女取り混ぜた観客が詰めかけ、質疑応答を含めて1時間半に及んだトークショーを立ち見で夢中になっていました。この人を惹きつける人間力が、作品の魅力であり評価であり、お金に置き換えられてゆくのだと思います。要は、写真作品魅力は、写真そのものだけではないだろうということです。



本日、大阪・中之島で開催されるギャラリートークには、どのくらいの人が集まるでしょうか。会期を通じてどのくらいの人が彼の作品を見に来るでしょうか。

「クルマの達人」の仕事を依頼した5年前、“あなたはきっとその人徳と実行力で海外で活躍するような写真家になるので、わたしはいま唾をつけにきた。”と上出さんに話しました。なにもかも自腹で突進してきた写真家としての活動に、日本だけでなく海外でも“評価の標し”としてお金を遺してゆく人が出始めていることをいちファンとして嬉しく思うと同時に、ひとつのコンテンツを共同で制作するパートナーとしていち早く仲間にすることに成功したヤマグチの選定眼の確かさにニヤニヤしたりもしていると、まあそういうわけです。

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上出優之利 写真個展「クルマの達人」、トークショー

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上出さんの写真展で開催されたトークショー、大盛況でした。キヤノンギャラリー銀座へひとときに50人以上が詰めかけたと言えば、ギャラリーを訪ねたことがある人なら分かると思います。すし詰め寸前の立ちっぱなしの1時間20分。お越しの皆さま、たいへんお疲れ様でした。上出さんの人徳、さすがですね。素晴らしいです。

上出さんが雑誌連載「クルマの達人」のために撮影した作品を紹介する写真展ではありますが、わたしもマイクを持って皆さんの前に立つことになりました。上出さんと共に展示された写真を順に巡り、わたしは写真で表現されたそれぞれの「クルマの達人」にまつわる仕事や個性が垣間見えるエピソードを話させていただきました。

記録に、と思い、それぞれの写真の前で上出さんとわたしが話す様子の動画を撮りました。その中から、お一人の動画を紹介します。このブログには動画を直接貼り付けることができないので、貼り付けた先のリンクを載せておきます。ぜひ、ご覧ください。

【トークショーの一場面】

ときに「クルマの達人」、振り返ればカーセンサー、カーセンサーEDGE誌での連載期間が26年目に入っています。そもそも「クルマの達人」という連載タイトルは、それ以前にCarEx誌で連載をしていた“新日本達人紀行”用に書いた数年分の原稿をまとめて出版したいという話をいただいた時に、その書籍用に考えた標題です。「クルマの達人」という看板は1997年に書籍のタイトルとして世に出ましたが、クルマにまつわる何かに心注いで働く人の考えや生き様に焦点を当てて紹介するというコンセプトは、もう30年を超えて継続をさせていただいているということになります。

そのような時間の中で、パワフルで魅力的な才人の生み出す企画に採りあげていただけたことに、とても感謝しております。


【上出優之利 写真個展「クルマの達人」】
東京・銀座での開催は26日(土)までです。ぜひ、お運びください。

キヤノンギャラリー銀座
入場は無料ですが、休館日があるので以下のウェブサイトで詳細をご確認の上、お出かけください。

【キヤノン公式ホームページ 上出優之利写真展「クルマの達人」】




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都地龍哉さん・上出優之利 写真個展「クルマの達人」

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【上出優之利 写真個展「クルマの達人」】
東京・銀座で絶賛開催中ですが、《明日(7月19日・土)の午後3時から》、写真家の上出優之利さんが皆さんの前で、展示中の作品を一点ずつ振り返りながら、氏にとっての撮ることについて説いてくれる約1時間のトークショーを開催します。

この席に「クルマの達人」で紹介したクルマの達人も駆けつけてくださり、上出さんといっしょにご自身の仕事についてお話をしてくださいます。詳細はブログの後半にありますので、ぜひ皆さんもいらしてください。

わたしの方でご来場予定を把握している方々、どのような「クルマの達人」なのか、ご来場いただける皆さんにお知らせしておきたく、誌面に掲載した原稿をここで紹介します。


四人目は…… 

都地龍哉さん
とぢ商店

一等賞以外はみんなビリ。
自動車の登録はそういう仕事。



到着した頃には、冬の空はすっかり暗くなっていた。シャッターの下りた工場の灯りが漏れる窓のあるドアを開けて中へ入ると、エンジンルームに上半身を突っ込んだ都地さんがいた。わたしの顔をチラリと見て、もう終わりですから上で話しましょう、と工具をまとめ始めたのを止めて、今の様子を写真に撮りたいのでどうかそのままでとお願いした。明るい時間帯には車検場に出掛けているか、机で調べ物をしていることが多い都地さん。真っ黒に手を汚してクルマにかじりついている光景は、もう長い付き合いになるわたしにとっても珍しかった。

一等賞以外はみんなビリ、というのは、都地さんの口癖である。都地さんは若い頃、バイクのレースにハマっていた。クルマにしてもオートバイにしても、結果に対する残酷なまでの非情さは、コースの上で真っ赤になってアドレナリンを噴出させた経験のある誰もが嫌というほど思い知らされる現実である。

「自分のことを他人が評価する。正確には他人ではなくて、状況なのかな。つまり、現実はこうですよ、ということがはっきりしちゃうのがレースなんですよね。そこには、頑張ったねとか、素晴らしい個性ですねとか、そういう表現はなにもないんです。決められたルールの中で競り合って、誰がいちばん速いか決めましょう、という場の一人に加わった瞬間、ルールに従って結果が出るだけ。2等賞の表彰台に立てても、横には1等賞の人がいる。3等賞を見てやった! と思うより、1等賞を見て負けたと感じる性分なんです。だから1等賞以外はみんなビリ、自分にとってはね」

そんな都地さんの仕事は、ざっくり言うと車検屋さんである。ただし、都地さんを頼って日本中から持ち込まれるクルマの多くは、いわゆる町中を普通に走っているクルマたちではない。レース専用車として製作されたクルマ、分厚い装甲を纏った特殊用途専用車、遙か昔にメーカーが消滅してしまった見たことも聞いたこともないようなクラシックカー……。そういうクルマにナンバープレートを付けて、つまり日本の法規に適合した登録車両として公道を走れるようにしてほしいという望みを叶える車検屋さんなのである。

「難しい仕事なんですが、少し見方を変えると難しくはないとも言えます。つまり、登録を適えるためのルールは法律ですから、明文化されたものとして決まっているわけで、自分がやることは、そのルールの中に収まるクルマですよということの証明作業なんです。もちろんその作業の過程には、灯火類や制動装置の仕様や性能、排気の状態を見直すような作業がつきものになりますが、何をしていいのか分からないということはひとつもないわけです。すべてルールで決まっていることですから、それを目標に仕上げればいいわけで。そういう意味では、レースのようにライバルが毎戦ごとにどんどん速くなって、いつまで経っても追いつけないなんていう難しさはありません」

けれども、任された車両によっては、そのルールが示すしきい値までの距離が遙か彼方に感じられることもあるはずだ。例えば、F1マシンで青山通りを走りたいというような夢。

「不可能じゃないですよ。製造者がはっきりしている分だけ楽かもしれません」

はははと笑った後、ポツリと。

「だから、1等賞以外はみんなビリなんです。あとちょっとでナンバー付けられたのにね、という評価は、自分の仕事にはないんです」


その日は、かなり遅くまで話し込んだ。辛くなることはないか、というような訊ね方をしたと思う。やることは同じだと笑うその仕事は、前例のない、つまり誰かに尋ねて答えを見つけられる可能性がとても低く、そういう事ごとにひとり黙々と取り組む日々に孤独を感じることはないかということが訊きたかった。

「レースと同じだと思っています。結果がすべてと話しましたが、それは言い換えれば誰かの評価を勝ち取るということと同意だと思うんです。この仕事を評価してくれる人がいるとしたら、もちろん自分を信じて依頼してくれたお客さんですよね。国もそうです。法律に適合していることが認められて初めて車検証は発行されます。そして、そうですね……」

そして?

「家族です。妻や娘たちが、お父さん凄いねって言ってくれること。評価という言葉が相応しいかどうかはわかりませんが、毎日、何十年もこの工場で世界中からやって来た見たこともないようなクルマやバイクを前に奮闘している姿を、いちばん間近に見ているわけですからね。自分にとって家族以上の評価者はいないんじゃないかって、そう思います。明日も、明後日も、困ったなぁどうしよう……というクルマが待ってる工場へ戻って、何とかしよう何とかなるさと仕事に打ち込める最大のモチベーションは、実はすごく身近にあるもんだと思います。自分の気持ちもそうだということも含めてね」

帰り間際、工場前にあった巨大な装甲車に乗って、都地さんと一緒に記念写真を撮った。ニカッといつもの笑顔で写真に収まってくれた都地さんがひと言。

“この装甲車は、すぐにナンバー付きますよ”

嘘みたいなことをサラッと言った都地さんのことがなんだかおかしくて、写真の中のわたしも思いっきりの笑顔で隣に収まっていた。


※2021年1月取材

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【上出優之利 写真個展「クルマの達人」】
  • ★7月15日(火)~26日(土) キヤノンギャラリー銀座
入場は無料ですが、休館日があるので以下のウェブサイトで詳細をご確認の上、お出かけください。
19日(土)15時からのトークショーでは、わたしもマイクを持たせていただきます。

【キヤノン公式ホームページ 上出優之利写真展「クルマの達人」】




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崎山和雄さん・上出優之利 写真個展「クルマの達人」

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【上出優之利 写真個展「クルマの達人」】
東京・銀座で絶賛開催中ですが、《明日(7月19日・土)の午後3時から》、写真家の上出優之利さんが皆さんの前で、展示中の作品を一点ずつ振り返りながら、氏にとっての撮ることについて説いてくれる約1時間のトークショーを開催します。

この席に「クルマの達人」で紹介したクルマの達人も駆けつけてくださり、上出さんといっしょにご自身の仕事についてお話をしてくださいます。詳細はブログの後半にありますので、ぜひ皆さんもいらしてください。

わたしの方でご来場予定を把握している方々、どのような「クルマの達人」なのか、ご来場いただける皆さんにお知らせしておきたく、誌面に掲載した原稿をここで紹介します。


三人目は…… 

崎山和雄さん
崎山自動車サーヴィス

俺は永遠の自動車少年。
これまでも、これからも。

人間五十年 下天の内をくらぶれば、夢幻のごとくなり。』

路地を挟んだ向かいには、小さな八百屋さん、錠前屋さん、ガラス屋さんなんかが商売をしている。籠の上に載っかった真っ赤なトマトを指さしながら、腰の曲がったおばあちゃんと夕飯の材料を求めにきたお客とのやりとりが微笑ましい。隣の錠前屋では軽トラから小さな段ボール箱を忙しく店の中へ、ガラス屋の老主人は店の奥の作業台でサッシに刃物を当ててなにやら作業中だ。
ちょっと騒々しい変わったクルマがやってくると、近所の窓から半ばいぶかしげにも見える興味深そうな顔が覗く。崎山自動車サーヴィスは、古くからの人が住む東京の街角の小さな自動車修理工場だ。

20年前、初めて崎山さんさんのことを紹介した「クルマの達人」を、わたしはこのように書き始めた。崎山自動車サーヴィスは、名うてのメカニックが工具を振るう整備工場として当時つとに名高く、愛車の仕上がり具合を覗きに立ち寄る有名人の姿も頻繁にあった。けれども、そのようなことを鼻に掛ける気取りはまるでなく、いわゆる町の整備工場そのものだった。

クルマの腹下から寝板を滑らせて現れた崎山さんに散歩する近所の人が「いい天気ね」と声を掛けるのと同じ調子で、整備が終わったアストンマーチンを引き取りに来たテレビでよく顔を見かけるような人に「クラッチをもっとうまく
やらなきゃ、また壊れちゃいますからね。ミートはこういう感じで……」と手振りを添えてニコニコと話す。その名調子をうなずきながら聞くクルマの持ち主の表情の、なんと楽しそうなことか。

いつも話してくれる「町の修理屋の代表みたいになりたかったの。それを東京でやりたかったわけ」という台詞ままの崎山自動車サーヴィス、今年いっぱいで幕を下ろす。ちょうど60年間東京で、すなわち戦後輸入車の移ろいのすべてを整備の現場で見続け、支えてきた「クルマの達人」が間もなく仕事の為の工具を置く。

「品川の大井町っていうところで生まれたんだけど、伊達のお屋敷が進駐軍に接収されてたせいで外車だらけの町だった。格好いいなって憧れたよ。で、中学の時は自動車雑誌を古本屋で手に入れて隅から隅まで読むようになって。16歳から赤坂にあったジャックス・ガラージっていう整備工場で働き始めて、気がついたら77歳になってた。

大人ってのはさ、よく見てると思う。職業訓練校に入れって勧めた叔父さんは、おまえはクルマが好きでそれ以外はできないっていう理由で話をしてくれたし、訓練校の先生に呼び出されたかと思ったら、おまえは将来好きなこと以外やるな、そういうタイプの人間だって諭された。

それに輪を掛けるような言葉でいろいろ教えてくれたのは親父(ジャック・Y・タナカ=ジャックス・ガラージの社長メカニック。崎山さんと血縁関係はない)だと思う。まだ働き始めたばかりの俺にプラグ交換をしろって。いや、そんなのできませんよって答えたら、好きなんだからできないわけない。やってみろ、って。1ドル1200円くらいで輸入部品の値段を計算していた時代だからね、プラグでも給料を軽く超える高級品で、しかも簡単に折れちゃうほどやわい。無茶なことを言う人だって感じたけど、俺のことを本当によく見抜いてくれたんだなって思う。21歳の時、おまえは将来自分で工場をやるに違いないので、自分が整備できるようになるだけじゃなく、人の使い方を覚えろ、とかね。

若かった頃に親父が掛けてくれたそういう言葉は自分の力になっている。何かあったときに慰めてくれる人より、力になる言葉を掛けてくれる人が好きなの。俺が24歳の時に若くして亡くなっちゃったけどね」

一間間口の商店が並んでいた場所にはマンションが建ち、通りを行き来した昔からの顔もすっかり減った。今や崎山自動車だけがこの界隈に流れる昔ながらの空気を残している場所になってしまった。

「体力のこともあるけど、もういいかなって。一つのことに60年だからね。もう十分でしょ。

若い頃に“東京には整備工場が掃いて捨てるほどある。でもおまえに金を払いたいから来てるんだ。なんたって、おまえみたいなのは放っておけない。”って、お客さんによく言われたよ。男芸者だからさ、俺がやるメカニックって仕事は。工場はステージで、そこで舞うわけだよ。こりゃあ凄いって、喜んでもらってなんぼだから。あっという間だったね、60年。

夢幻のごとく……。織田信長が好きだった『敦盛』の一節、いいでしょ。あまりに一瞬のことで、自動車少年のままだから。永遠の自動車少年のままだから」

※2020年10月取材

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【上出優之利 写真個展「クルマの達人」】
  • ★7月15日(火)~26日(土) キヤノンギャラリー銀座
入場は無料ですが、休館日があるので以下のウェブサイトで詳細をご確認の上、お出かけください。
19日(土)15時からのトークショーでは、わたしもマイクを持たせていただきます。

【キヤノン公式ホームページ 上出優之利写真展「クルマの達人」】




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三村英之さん・上出優之利 写真個展「クルマの達人」

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【上出優之利 写真個展「クルマの達人」】
東京・銀座で絶賛開催中ですが、《明日(7月19日・土)の午後3時から》、写真家の上出優之利さんが皆さんの前で、展示中の作品を一点ずつ振り返りながら、氏にとっての撮ることについて説いてくれる約1時間のトークショーを開催します。

この席に「クルマの達人」で紹介したクルマの達人も駆けつけてくださり、上出さんといっしょにご自身の仕事についてお話をしてくださいます。詳細はブログの後半にありますので、ぜひ皆さんもいらしてください。

わたしの方でご来場予定を把握している方々、どのような「クルマの達人」なのか、ご来場いただける皆さんにお知らせしておきたく、誌面に掲載した原稿をここで紹介します。


ふたり目は……

三村英之さん
GRAND ARTS

一本の筆と日本人としての感性が
世界を舞台に描き始める日を夢見て


昨年の11月、SEMA SHOWの会場を歩いてきた。

SEMA SHOWというのは、自動車の主にアフターマーケットに関するあらゆるビジネスを対象とした事業者向けの見本市で、アメリカはラスベガスの広大な会場で毎年開催されている。

世界のトレンドを占うカスタムカーに群がる人々の熱気はもちろんとんでもなく熱いのだけど、日本で開催される同じようなイベントではあまり感じられないある雰囲気が、やはり今回も熱かった。

その熱い雰囲気を全身に浴びてるうちに、そうだ、日本に帰ったら三村さんに会いに行こうと、思った。

1ヶ月後、奥の方から工具が動く音が聞こえてくる工房の入り口に立っていた。中に入ってゆくことはせずに外で待っていたら、しばらくして三村さんが表へ出てきた。たった2年しか経っていないのに、前に会ったときよりずっと創作家の風情が強くなったように感じた。なぜだろう。

「自分のやるべきことが、とても整理されてきたような気がします。自分にしかできないことがあって、でもそれを前面に押し出すだけでは理解してもらえないということもわかっていて、じゃあどうすればいいのかという答えが、すごく見えてきたような気がするんです」

少し興奮気味にそう切り出した言葉の続き、実は創ってゆきたい作品の内容については、2年前に話してくれた夢やアイデアと何も変わっていなかった。けれども、やらないことについては、思いっきり明確になっていた。

「仕事ですから、それでお金を稼いで生きてゆかなければならないじゃないですか。そうすると、どうしても得意なんだからやってよと頼まれた仕事を断れない自分がいたんです。もちろん今でも、完全に切り分けられたわけではないです。そこまで、自分が理想だと考えるバランスには到達できていないです。けれども、もっともっと自分らしさが濃い自分になるために、いろいろと整理がついてきたようには感じるんです」

黒く塗られた壁とファンスに囲まれた秘密基地のような空間には、あらゆる技法で描かれた絵や立体物の作品が並んでいる。例えばスプレーガンで描かれた画も、素晴らしい出来栄えでそこに並んでいる。

「あぁ、エアブラシアートの画ですね。もちろん、仕事としてのクオリティは十分以上にクリアしていると思います。でもあれって、エアブラシアートを勉強した人なら誰でも描けるんですよ、技法的には。だから、用意された写真を元にそれをブラシアートで描く、という作業は、自分じゃなくてもできるわけです。そういうものを自分の作品の中から排除してゆこうという流れが、かなり進んだ気がします」

近しい間柄の中で、そのうち活躍の舞台を海外に移してしまうだろうな、と直感する人が2人いる。三村さんは、そのうちの一人だ。

SEMA SHOWで今年も感じた雰囲気の中に、三村さんを置いてみたいと話した。ある作品に感銘を受けたとき、こういう創造ができる人物は誰だろう、そういう人物が籍を置いて力を発揮してもらえるこの企業はラッキーだ、という風に発想する雰囲気がSEMA SHOWの会場には満ちている。だから、組織よりも、個人へのリスペクトが当然のように先に立つアメリカのあの会場で、思い存分 "我こそは!”と叫びながら、作品を紹介する三村さんが見てみたいのだと話してみた。

「前にも話したと思うんですけど、僕の仕事はあくまで代行屋です。それは、夢を叶えるということをピンストライプや立体の造形で実現することはできるんですが、そもそもそれがどういう夢なのかは、お客さんの心のなかにあるものだからです。言葉にしにくいその夢を聞き出して、そのイメージに自分なりの工夫を加えて、そして出来上がりを見た瞬間に満面の笑顔がこぼれるるために必要なことすべてが、僕の仕事だというスタンスは変わっていません。

日本でも、僕のそういうスタイルを理解してくれて、楽しんでくれたり応援してくれたりする人には、とても恵まれていると感じています。でも、もしそういう感激の輪が海を超えることができれば最高ですね! 実は、以前からすごく興味があるんです、SEMA SHOW。来年、ぜひ一緒に行きましょう」

そうですね、三村さん。来年は、とりあえず様子を見に行きましょう。そして再来年はウォッチャーではなく、パフォーマーとしてラスベガスの会場に立ってください。

じゃあ、行きますか! と言ったら、まず英語を勉強しなくちゃですね、と笑っていた。大丈夫、自らの魂の表現を両手で掲げたときのその熱い眼差しがあれば、きっと世界中どこでも日本語で通用します。

※2021年12月取材

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【上出優之利 写真個展「クルマの達人」】
  • ★7月15日(火)~26日(土) キヤノンギャラリー銀座
入場は無料ですが、休館日があるので以下のウェブサイトで詳細をご確認の上、お出かけください。
19日(土)15時からのトークショーでは、わたしもマイクを持たせていただきます。

【キヤノン公式ホームページ 上出優之利写真展「クルマの達人」】




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後藤新太郎さん・上出優之利 写真個展「クルマの達人」

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【上出優之利 写真個展「クルマの達人」】
東京・銀座で絶賛開催中ですが、《明日(7月19日・土)の午後3時から》、写真家の上出優之利さんが皆さんの前で、展示中の作品を一点ずつ振り返りながら、氏にとっての撮ることについて説いてくれる約1時間のトークショーを開催します。

この席に「クルマの達人」で紹介したクルマの達人も駆けつけてくださり、上出さんといっしょにご自身の仕事についてお話をしてくださいます。詳細はブログの後半にありますので、ぜひ皆さんもいらしてください。

わたしの方でご来場予定を把握している方々、どのような「クルマの達人」なのか、ご来場いただける皆さんにお知らせしておきたく、誌面に掲載した原稿をここで紹介します。


まずは…… 

後藤新太郎さん
GARAGE GOTO

本当に生きているんじゃないかと
アルファロメオとは、そういうクルマ


ちょうどピストンを加工しているところだった。手製の治具に旧いアルファロメオのピストンを慎重に取り付け、工作機械の刃物を下ろす位置を何度も確かめてから機械のスイッチを押すと、デジタルの表示パネルに赤いゼロが並んだ。そこまで10分ほど。その後、ようやく回した刃物がキリキリという音を立てながらピストンのてっぺんを少しずつ削り始めた。削り落としの深度を示す赤い数字と、刃先とピストンが触れている一点を交互に見比べながらまた10分ほど。機械を止めてピストンを取り出す。手のひらに乗せて光にかざし納得した表情を見せると、それを大切にトレイの上に戻し、次のピストンを手に機械のところへ戻る。

真剣なまなざしと柔和さが混ざった、得も言われぬ終始の表情を見たとき、嗚呼後藤さんの工場を訪ねているのだなあと、こちらまで気持ちが和んだ。

アルファロメオの整備でつとに有名な後藤さんは、町乗りからサーキット走行まで、愛好家の望む施しを彼らの愛車に注ぎ込むメカニックであることはもちろん、工作機械の前に立ち、彼一流の手仕事を施すチューナーでもある。そして、本当に好きなんだなぁと感じるこの表情こそが、多くのファンの心を掴む魅力の真骨頂なのだと確信させる。

「最初は、どうしてもアルファロメオでなければならないというわけではなかったんですよ。クルマに興味を持ち始めた頃は、解体寸前の国産車を安く買ってきて、自分で直して乗ってました。何台もね。きっと直すのが好きだったんだと思います。機械いじりという意味でね。そんな中で、たまたまアルファロメオを所有することになったんです。まだサラリーマンとして働いていた三十代の頃の話です」

初めて手に入れたアルファロメオも例に漏れず、そのまま安心して乗り出せるような状態ではなかった。後藤さんは、それまでの愛車にしたように修理をして整備をして、いくつかのポイントを自分好みに改良して運転を楽しんだ。そのとき、ある感触が後藤さんの感性を射貫いた。

「特に速いクルマではありませんでした。性能を追求したスポーツカーという趣では、ほかにもっと驚くようなクルマがあるだろうというクルマでした。

けれども、なんて心に響くクルマなんだろうと強く感じたんです。なんて楽しいクルマだろうという感覚が、運転操作のすべてから返ってきて、五感が震えるというか、ワクワクする気持ちが止まらない。それなのに、まったく神経質なところがなく、もっと言うとやさしい気配に包まれたままクルマを走らせることができる。少しずつ運転に慣れてくると、もっと上があるよと穏やかに次のステップを教えてくれる。そこへ到達すると、ほら次はここだよとまた教えてくれる。

目からうろこが落ちるような思いでした。こいつは実は生きていて、自分のことを見ているんじゃないかと本気で感じることがあるほど、人間っぽいクルマにやられちゃったんです。アルファロメオに完全にやられちゃったんですよ、僕」

38歳のとき、勤めていた会社を辞め、ガレージゴトウを興した。不要になったプレハブ小屋の材料一式を譲り受け、すでに後藤さんの整備を受けていたクルマ仲間と一緒に建て、四六時中そこでクルマと触れ合う日々が始まった。さっきまでピストンの加工をしていた工作機械がぎっしり並んだ小さな建物が、33年前、後藤さんが第2の人生をスタートさせた空間である。
「あっという間でしたね。もう72歳になりました」

昔よりもずいぶん細身になったことは、少しサイズが大きく見える着慣れたツナギ姿が気づかせてくれた。

「メカニックというのは、体力が必要な仕事ですから。いつまで現場に立てるでしょうかね。部品の加工作業は、まだまだ大丈夫だと思うんですけど」

後藤さんのファンにとっては少しギョッとするようなことを口にした後、息子が少しずつ整備の腕を上げているんだという話をうれしそうにしてくれた。

「いや、大丈夫。まだ引退しないから大丈夫。試してみたいことがまだまだあるんです。もうずいぶんいじくったはずなのに、こういうチューニングをしたらどんな結果が出るんだろうっていう興味が尽きないんです。だから、まだ大丈夫ですよ」

そう言って大きな手で頭を掻きながら魅せる人懐こい笑顔に今日も出逢えた。

工場を後にした帰り道、後藤さんをクルマに例えるなら……などということをふと考え、思わず頬が緩んだ。繊細で技術的な造詣の深さがあって、けれども神経質過ぎることがなく、そして近づいても近づいても次のステージを用意できる奥深さを持っているクルマ。さっき、それはアルファロメオというクルマです、と後藤さん本人が言ったばかりじゃないか!
 

※2021年6月取材


撮影時の様子を記録した短い動画をFacebookにアップしておきます。
【コチラ】からぜひご覧ください。

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【上出優之利 写真個展「クルマの達人」】
  • ★7月15日(火)~26日(土) キヤノンギャラリー銀座
入場は無料ですが、休館日があるので以下のウェブサイトで詳細をご確認の上、お出かけください。
19日(土)15時からのトークショーでは、わたしもマイクを持たせていただきます。

【キヤノン公式ホームページ 上出優之利写真展「クルマの達人」】




※ぜひ、Facebookでわたしをフォローしてください。ブログよりも更新が楽なので、スピーカーシステムの話、クルマの話、はるかにたくさんの発信をしています。簡単な動画ですが、スピーカーシステムの音を車内で録音したファイルも、Facebook内にはたくさんあります。鑑賞だけならアカウントは不要です。下のFacebookのURLから飛べます。

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Twitter / nineover



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上出優之利 写真個展「クルマの達人」、開催

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上出優之利(かみで・まさのり)さんの、写真個展が本日から開催されます。テーマは、なんと「クルマの達人」です。

まずは開催概要から。
  • ★7月15日(火)~26日(土) キヤノンギャラリー銀座

入場は無料ですが、休館日があるので以下のウェブサイトで詳細をご確認の上、お出かけください。

19日(土)15時からのトークショーでは、わたしもマイクを持たせていただきます。


【キヤノン公式ホームページ 上出優之利写真展「クルマの達人」】



わたしが書くものをご愛読いただいている皆さんが写真展をより楽しんでいただけるように、上出優之利さんとわたしの関係について、少し書こうと思います。

上出さんとわたしが知り合ったのは、1990年代半ばだったと思います。

平成終焉のタイムリミットまで20年ほども残された、バブル経済の匂いがまだ日本を強く覆っていた頃、共通の知り合いだった女性が引き合わせてくれました。クラブDJとして活躍していた上出さんは、都内の多くのクラブでちょっとした顔で、彼がドアを開けて音楽轟くフロアに降りてゆくとパッと人が集まってくるという印象で、女にも男にもとてもモテていたことをよく覚えています。

当時原稿を書いていたREV SPEEDという雑誌で、クラブミュージックを支える音響機材とカーオーディオでのノウハウを絡めて紹介する記事の連載を作ったのは、上出さんと知り合ってクラブに出入りするようになったことがきっかけでした。上出さんにもクラブミュージックの指南役として登場していただくようにお願いして、キャラクターイラストを制作したりもしました。もう30年以上前の懐かしい話です。

それから25年ほど、まったく連絡を取り合わない時間が過ぎました。仲違いしたわけではなく、お互いに必要さを感じない時期だったのだと思います。自分のことをもっともっと研ぎ澄ますことに専心する時間でも、あったのだと思います。

Facebookで、四半世紀ぶりに「上出優之利」という名前を発見しました。彼は写真を撮る人になっていました。

「モノクロのブルース」という写真集が、そこで紹介されていました。何げなくそれを覗いたことが、上出さんとの新しい付き合いを始めるきっかけになりました。

新宿・夜の歌舞伎町界隈で撮られた、いわゆるストリートフォトというジャンルの写真たち。すべての写真に写しだされたあからさまな人々の生。笑い怒り愛し泣き走り倒れ……美しく汚く。血潮流れる温もりのある限り続く生の歓びと哀しさと、無機質な都会との鮮烈な輪郭。

衝動 “上出さんに「クルマの達人」の写真を撮ってほしい!”

「2020年1月23日18時・上出さん達人写真打ち合わせ」とカレンダーに記録がありました。新宿南口の騒がしい安居酒屋で、写真を撮っていただきたいとお願いして、快諾をいただき、後日そのときまでの7年間写真を撮っていただいていたカメラマンに “好きな人ができた……” というようなお仕事終了のお願いを了承していただき、2020年4月27日に上出さんが撮影した写真と共に作った「クルマの達人」を世の中に届けることができました。連載「クルマの達人」の3人目の撮影者がこのとき誕生しました。

写真は、その掲載のために3月27日に上出さんが撮った「山口宗久」の姿です。トークショーの日以外にも、会場にお邪魔しているかもしれません。この顔を見たら、ぜひ話しかけてください。

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それからあっという間に、5年が経ちました。60回分の連載を一つのカタチにまとめてみたいという上出さんの想いが、今回の写真展を実現させました。ひとつの継続的に連続する自身の所作に、ファインダーを覗き続けてきた本人は何を見たのか。二歳先輩ではありますが、30年来の友人であり、仕事のパートナーである上出優之利さんの感性に、ぜひこの貴重な機会を通じて直接触れていただきたいと思います。






文中の「モノクロのブルース」は、以下のサイトでスライド-ショーがご覧になれます。ぜひ、ご自身が持てるいちばん大きな画面で、写真の全体が見渡せる少し離れた距離から感じてみてください。

【モノクロのブルース】



【上出優之利写真展「クルマの達人」】は、大阪でも開催されます。

9月2日(火)~13日(土) キヤノンギャラリー大阪




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