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大好きなクルマと大好きな音楽と。



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Le Mans study, engine : YR-40T 3998cc V8 T-turbo
Tokai University Shonan '05
text, photo / Munehisa Yamaguchi
   
クルマが笑ってる

もうずいぶん長い時間、クルマと距離の近い仕事を続けているが、こんなに幸せなクルマに出会うことは珍しい。取り囲むようにして、なにやら弾けているのは、このクルマに夢を託す学生たち。

この日は、彼らの手によって完成したクルマをキャンパスで走らせる、いわば仲間たちへのお披露目が行われた。プロドライバーの操縦によって疾走するレーシングカー。物珍しさに集まった何千もの学生は間近で見聞きする本物の迫力に、一様に目が点になり、大きなエンジン音が通り過ぎた後の空白を感嘆の騒ぎで埋めた。

してやったり大成功! と、興奮冷めやらぬまま愛車を囲む彼らの表情は、この上なく自信に満ち、明るい。作り手の感情は、そのまま作品にも乗り移るのか、私にはこの白いレーシングカーも最高に幸せな表情を浮かべているように見えた。

彼らは工学部の学生で、この写真はもう1年以上も前に撮影したものだから、何人かは自動車メーカーや自動車関連企業のエンジニアとして、すでに社会へと巣立っている。機密の多い業務に携わり、もう私とも丸裸な会話など許されないところで働く彼らには、だからせめて手がけたクルマが世に出るときに、内緒にしてましたがこういうことだったんです! と胸を張って、この写真と同じように私の前で弾けてほしい。作り手の自信と歓喜が乗り移った素敵な表情のその1台と共に、懐かしい顔を見せてほしい。

クルマ作りから引退する日が訪れるまで、新しい1台を完成させるたび、この日の気持ちを思い出せるようなエンジニアであり続けることが、素晴らしい機会を与えてくれた恩師や先人への最大の酬いであり、顧客に対する責任だと思うのだ。

2005 copyright / Munehisa Yamaguchi