“Shimazu Brothers” |
何の因果か、文章を書くということを生業にしてからもう十数年になる。私の知る限り、私の家系に文筆でメシを食った人間はいないから、まったくもって何の因果かと思うわけだ。父方の祖母はお琴の師範だったそうなので、四十路を越えた今でもまたバンドを組んで音楽をやりたいなどと考えるのはそのせいかななんて考えることがあるが、どうにも血が薄まってしまったようでまるで使い物にならない。それともうひとつ、この歳になって血のつながりを感じることがある。
私の祖父とその兄は、日本で初めてガソリンエンジンを作った、オートバイを作った、飛行機のエンジンを作った。私の意識の中から二人が身内であることを差し引いても、これは偉業であると思う。彼らが成し遂げたことの大きさを考えると、恥ずかしながら血の薄まりようたるや赤面至極な有り様ではあるが、それでもエンジンが高らかな音を奏でて回る様子や、職人が大切に手を入れて整備をしている姿を見ると、ドキドキしたり泣けそうに嬉しい気持ちになったりすることがあるのは、やはり血なのかなぁと感じる。ひょっとしたら、そういうことを思う歳になったというだけかもしれず、恥ずかしながらの打ち明け話ではあるのだが。
文章を書くことを仕事に決めて、「クルマの達人」、「働くということ」の連載を始めとする多くの仕事を通じて、インタビューを任される沢山の機会を与えていただいた。恐らく、400名は十分に超えていると思う。いろいろな人がいたが、やはり何かに夢中になっていて、今まさにその渦中にあるという人の言葉はとても素敵なものである。私はそういう言葉を発する人が、大好きだ。
私の祖父とその兄は、日本で初めてガソリンエンジンを作った、オートバイを作った、飛行機のエンジンを作った。私の意識の中から二人が身内であることを差し引いても、これは偉業であると思う。彼らが成し遂げたことの大きさを考えると、恥ずかしながら血の薄まりようたるや赤面至極な有り様ではあるが、それでもエンジンが高らかな音を奏でて回る様子や、職人が大切に手を入れて整備をしている姿を見ると、ドキドキしたり泣けそうに嬉しい気持ちになったりすることがあるのは、やはり血なのかなぁと感じる。ひょっとしたら、そういうことを思う歳になったというだけかもしれず、恥ずかしながらの打ち明け話ではあるのだが。
文章を書くことを仕事に決めて、「クルマの達人」、「働くということ」の連載を始めとする多くの仕事を通じて、インタビューを任される沢山の機会を与えていただいた。恐らく、400名は十分に超えていると思う。いろいろな人がいたが、やはり何かに夢中になっていて、今まさにその渦中にあるという人の言葉はとても素敵なものである。私はそういう言葉を発する人が、大好きだ。
数年前に、日本で初めてのガソリンエンジンが誕生して、日本で初めてのオートバイが誕生して、間もなく100年を迎えるということに気づいた。当の本人たちはとうに他界してしまったが、私の記憶の中に残る面影はまさに私が大好きな、夢中な人生を駆け抜けた人だということにも気づいた。私はこれを書き残さなければならない。それが因果というものだと思うようになった。
毎年墓参りには行くようにしているが、もちろん本人たちに話を聞くことは適わない。生前の様子をよく知る人たちもかなりの高齢である。加えて戦災や幾度かの引っ越しを経たせいで、彼らの生き様を伝える多くのものが失われてしまっている。
親類の協力を得ながら残された資料を段ボール箱一箱分かき集めることができたが、まだ足らない。もっと詳しく知りたい。それから筆を執りたい。取材半ばでこのようなページを公開したのは、是非とも彼らについて、彼らの残した仕事について、何かを知る方々のご協力を賜りたいと考えてのことである。可能な限りどこへでも取材に伺うので、現存する仕事の跡や資料の所在をご存じであれば、ご一報いただければありがたい。取材の過程は、このページの中で随時報告していきたいと考えている。
因果応報とはよく言ったものだ。私は今、まるで何かに導かれるようにこの仕事に夢中なのである。
毎年墓参りには行くようにしているが、もちろん本人たちに話を聞くことは適わない。生前の様子をよく知る人たちもかなりの高齢である。加えて戦災や幾度かの引っ越しを経たせいで、彼らの生き様を伝える多くのものが失われてしまっている。
親類の協力を得ながら残された資料を段ボール箱一箱分かき集めることができたが、まだ足らない。もっと詳しく知りたい。それから筆を執りたい。取材半ばでこのようなページを公開したのは、是非とも彼らについて、彼らの残した仕事について、何かを知る方々のご協力を賜りたいと考えてのことである。可能な限りどこへでも取材に伺うので、現存する仕事の跡や資料の所在をご存じであれば、ご一報いただければありがたい。取材の過程は、このページの中で随時報告していきたいと考えている。
因果応報とはよく言ったものだ。私は今、まるで何かに導かれるようにこの仕事に夢中なのである。
2010 copyright / Munehisa Yamaguchi